598というスピーカーの存在(長岡鉄男氏とpost-truth・その6)
漢文学者・ 東洋学者の白川静氏によれば、
【くるう】という言葉は「くるくる回る」という場合の【くる】ね、
「くるくる」と同じ語源だそうで、
獣が自分の尻尾を追いかけてくるくる回ったりする、理解できない動作をする、
それが【くるう】ということ、だそうだ。
自分の尻尾を追いかけまわす、
こんな馬鹿げていて、無駄な行為はないだろう。
でも、それが狂っている、ということなのだ、ともおもう。
その意味からすると、確かに長岡鉄男氏は狂っていなかった。
常識人である。
だからこそ、長岡鉄男氏はあれほどコスト・パフォーマンスについて語られたのではないのか。
長岡鉄男氏は1926年1月5日生れである。
ぎりぎり大正生れである。
岩崎先生が1928年、井上先生が1931年、菅野先生、山中先生、長島先生が1932年、
瀬川先生が1935年生れだから、
長岡鉄男氏もラジオやアンプの自作の経験があるはずである。
以前、国産メーカーに勤務されていた方からきいたことがある。
昔の秋葉原は、テープデッキのヘッドも売っていた店があったそうで、
長岡鉄男氏はアンペックスのヘッドをその店から購入し、テープデッキを自作された、とのこと。
スピーカーの自作で知られていただけに、この話をきいたときは、
意外な感じもしたが、この時代の人だから、自作は当然のことだとも思った。