「貌」としてのスピーカーのデザイン(その1)
スピーカーの風貌は、他のオーディオコンポーネント以上に気になる。
サランネットをつけて聴けば、そんなこと気にならないだろう──、
そうとも思うけれど、そうでもないこともある。
例えばスペンドールのBCII。
サランネットをつけて聴くことを前提としたフロントバッフルの仕上げである。
サランネットを外した状態をすぐにイメージできるけれど、
その音を聴いていると、サランネット付きの姿しか目に入らない。
その一方で、サランネットをつけた状態で聴いていても、
サランネットを外した姿に気になってしまうスピーカーがいくつもある。
自分でもなぜだろう? と思い続けている。
しかもサランネットなしの姿が気になって仕方ないスピーカーに限って、
サランネットを外した状態の音が標準と思われる。
フロントバッフルもきちんと仕上げがなされたりしている。
サランネットがあろうとなかろうと、その姿が気になるスピーカーの代表格が、
私にとってはJBLのDD66000である。
60周年記念モデルとして発表された写真を見た時から、
優れたデザインとは少しも思えなかった。
1998年にAppleからiMac(ボンダイブルーの最初のモデル)に感じたこと、
それに近いことを感じていた。
しばらくして知人宅でじっくりと聴く機会があった。
きちんとセッティングをつめていけば、なるほどいいスピーカーだ、と感じた。
その感じは聴き進むにつれて強くなる。
と同時に、DD66000の姿が耐えられなくなってもきた。
DD66000はサランネットありとなしの音の違いは、かなり大きい。
一度外した音を聴いてしまうと、つけた音は聴きたくない。
ならば目をつぶって聴けば? となる。
たいてい目を瞑って聴いている。
それでもDD66000の姿が浮んできて、
DD66000がのそのそと前に歩き出しそうな感じすらしてきた。
ここまでくると、聴いているのが気持悪くなってきた。
初めての体験だった。