Date: 3月 29th, 2017
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ヨッフムのベートーヴェン「第九」

日本語版はなくなった月刊PLAYBOYだが、
創刊号からしばらくはオーディオを取り上げていた。
瀬川先生も執筆されていた。

1981年1月号では、『第九』ベスト・レコード研究というタイトルの記事があり、
瀬川先生はオーディオ的な見地から、での選択である。
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 数多くの〝名盤〟の中から、まず第1に推したいのは
■ヨッフム指揮/ロンドン交響楽団
 録音は1978年3月。そのせいもあってか、音が実にみずみずしい。各楽器の音色の微妙な色あいが十分に美しくとらえられ、しかもそれらが互いによく溶けあい、奥行きの深さをともなって聴こえてくる。まさに『第九』かくあるべしとでもいいたいレコーディングであり、しかも演奏もまた最上級だ。イギリスEMIの録音は、昔から美しい艶のある音に定評があったが、反面、録音の時期によっては、ややひ弱な音に感じられるときもあった。しかし、このヨッフム盤は、音に充実感とコクがあって、重厚だが決して重く粘ったりしない。それはもちろん、ヨッフムの演奏の、円熟の中にある意外な若々しさに負うところが大きい。
 ヨッフムは以前にもフィリップス・レーベルで同曲を入れている。演奏は69年の録音で、EMI録音とのあいだに約10年のへだたりがあるにしても、録音はむろんのこと演奏自体の出来栄えも、問題なく新盤の方が良い。試聴盤を返却したあと、即日レコード屋に飛んで行って買ってきた。
 録音の良さ、という面からは、次に、
■カラヤン指揮/ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラ
 録音は1977年。ヨッフムより少し早い。カラヤン盤は『第九』だけでも数種類出ているが、録音も演奏も、この77年盤が最高といえる。ドイツ・グラモフォンの録音は、本質的に響きがやや硬い。そのことは、EMIやフィリップスの音と比較してみるとよくわかる。しかし、このカラヤン盤に関する限り、音の硬さは最小限にとどめられて、各パートの繊細な動きとその表情の精妙さを、十分によくとらえている。数あるベートーヴェンの交響曲の録音の中でも、やはり上位に置かれるべき録音であろう。ただ、それはオーケストラ・パートに限っての話、であって、第4楽章に入り、テノールの〝おお友よ〟のレシタチーフが始まったとたんに、オーケストラ・パートの音量に比較して、声の音量が、いささかバランスをくずして大きすぎる点に、奇異な感じを抱かされる。
 このレコードは、発売直後に入手して、何度か聴いているにもかかわらず、いまだにこの部分にくると、どうにもなじめない。なぜか4人の独唱者の声をクローズアップしすぎていて、とても不自然だ。合唱に入ってからのコーラスの音量とオーケストラの音量のバランスは、そんなにおかしくないものだから、よけいに独唱パートの音の不自然な拡大が耳につく。その点を除きさえすれば、という条件つき、というのも妙なものだが、やはり録音という面では注目盤、ということになる。
 ところで、これ以外には、中途半端に「新しい」録音よりも、3枚の、少々古い、しかしすばらしいレコードをあげておきたい。それは、
■セル指揮/クリーヴランド交響楽団
■クリュイタンス指揮/ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラ
■S=イッセルシュテット指揮/ウィーン・フィルハーモニー・オーケストラ
 いずれも、今日的な繊細、鮮明かつダイナミックなという録音ではなく、少々古めかしく聴こえるが、しかし音楽的なバランスがすばらしく、それぞれに、つい聴きほれさせる。むろん、それは演奏自体のすばらしさでもある。
 これらのレコードを聴いていると、録音の良さとは、必ずしも新しさがすべてでないことが、よくわかる。
 ただ、セル盤とクリュイタンス盤は、一枚におさめてあるため、どちらも、あの陶酔的な第3楽章が、A面とB面に分割されている。
 とくにセル盤の跡切れかたが、やや唐突で、感興をそがれるのは残念である。
 ただし、セル盤もクリュイタンス盤も1300円と格安だ。
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オイゲン・ヨッフムの「第九」のことは、ステレオサウンド 57号、
プリメインアンプの総テストでの試聴レコードのところでも書かれている。
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ベートーヴェン/交響曲第九番「合唱」──たまたま、某誌でのベートーヴェンの第九聴き比べという企画で発見した名録音レコード。個人的には第九の録音のベスト1としてあげたい素晴らしい録音。音のひろがりと奥行き、そして特に第4楽章のテノールのソロから合唱、そしてオーケストラの盛り上がりにかけての部分は、音のバランスのチェックに最適。しかも、このレコード独特の奥行きの深い、しかもひろがりの豊かなニュアンスというのは、なかなか再生しにくい。
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このヨッフムのベートーヴェンがSACDで復刻される。
タワーレコードから発売予定である。

「いい音」について考えていくうえでも、聴いておきたい一枚だ。

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