Date: 3月 28th, 2017
Cate: 598のスピーカー
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598というスピーカーの存在(その33)

598のスピーカーの重量が増していったのは、
それもバランスを崩してまで増していったのには、
長岡鉄男氏の影響があったためだ、と私は受けとめている。

長岡鉄男氏は、ある時期から重量を量られていた。
そのこと自体には、長岡鉄男氏なりの考えが背景にあったためだろうが、
このことが598のスピーカーの重量化をエスカレートさせていったのは間違いない。

いま、1980年代の598のスピーカーのことを書いていて、
やはり気になるのは、長岡鉄男氏が、当時をふり返って何か書かれているのだろうか、である。

私は長岡鉄男氏の文章は、ほとんどといって読んでいない。
本も持っていない。

大きな図書館に行き、昔のFM誌、オーディオ雑誌を丹念に調べていけばいいこなのだが、
どこかめんどうだなと思う気持が強かった。

すこし前に、長岡鉄男氏の文章の一部をコピーして送ってくださった方がいた。
1993年に音楽之友社から出た「長岡鉄男の日本オーディオ史 1950〜82」掲載の一文である。
     *
 80年代に入って59800円のハイCP機が続々登場、世にいう「598戦争」である。当初20kgぐらいからスタートした598スピーカーはやがて重量競争に入り、最終的には鉛や人造石まで入って35kgに達した。鉛や人造石といってもコストはユニット一本ぐらいかかってしまうのでコストアップは免れない。ウーファーも30cmからスタートして、30・5cm、31cm、31・5cm、32cm、33cmと少しずつ大型化、また素材競争で高剛性化が進んだため、コーンの重い大口径ウーファーをドライブするには144φ×20mmもの大型マグネットが必要になり、これを支えるフレームは10mm厚、15mm厚、20mm厚と強力になり、正気の沙汰とは思えない無茶苦茶な競争になった。十万円のものを六万円で売るような激安合戦、新宿のカメラ屋なみである。これで音がよければいうことはなしだが、大口径化、高剛性化でバランスを失い、低音不足、ハイ上がりの硬質な音になってしまった。容積からすると25cmウーファー向きのキャビネットに30cm以上のウーファーを取付けたので理論的にも低音は出にくいのである。コスト面では完全な赤字、音質面ではユーザーの好みから離れ、87年を頂点に多くのメーカーは598スピーカーから手を引く。終わってみれば勝者なき戦いだったのだ。僕はビクターSX−511(¥59800)のユニットを使って大型フロアタイプを作ったことがあるが、ユニットだけ買っても六万円はする程の豪華なものだった。
     *
見出しには、熾烈な「598」戦争、とある。
書き写していて、意外な感じがした。

598のスピーカーのアンバランスさを、指摘されていることにだ。
1980年代後半の598のスピーカーのアンバランスぶりは,すごかった(というよりひどかった)。

確かに当時の598のスピーカーにかけられたコストは、もっと上のランクと同等だった。
その意味ではハイコストパフォーマンスとはいえるのかもしれないが、
オーディオ機器は、スピーカーに限らず、音である。

肝心の音までもがアンバランスで、ハイCP機といえるだろうか。

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