「音楽性」とは(その11)
ステレオサウンド 54号のころは、まだCDは登場してなくて、プログラムソースはアナログディスク。
プレーヤーシステム、カートリッジ、コントロールアンプ、パワーアンプ、それにそれぞれの接続ケーブル、
こここまではまったく同一条件で鳴らしても、スピーカーシステムだけが変っただけで、
ヘブラーのピアノが、優美に歌いもすれば、おさらい会レベルにまでおちてしまう鳴り方をする。
セッティングによってスピーカーの鳴り方は、ときには大きく左右される。
とはいうものの、セッティングだけの要因によって、ヘブラーのピアノが、ここまで変るわけではない。
あきらかにスピーカーシステムによって、ヘブラーのピアノの歌い方も、
日本のとあるポップス歌手の歌い方も、大きく変ってしまう。
なぜ、こうも変質してしまうのだろうか。
菅野先生が語られていることで、
「バランスとか、解像力、力に対する対応というようなもの以前、というか以外というか」に、
その鍵がある。
なにかスピーカーシステムとしての物理特性に、大きな問題点をあるから、
そういう変質が発生する、とはいえない。
むしろ周波数特性も広く、ほぼフラットといってもいい、歪率も低い値で、指向特性も申し分ない。
とにかく物理特性的にはなんら欠陥らしきものは見当たらないスピーカーシステムであっても、
ヘブラーのピアノを、ときに大きく変質させてしまうものがあらわれる。
ここが、ひじょうにやっかいなところだ。