Date: 12月 7th, 2016
Cate: 対称性
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対称性(その7)

B&Oというブランド名を知ったのは、
私のオーディオのスタートとなった「五味オーディオ教室」でだった。
     *
装置の外観もまた、音を美しく聴く要素のひとつである。

見ているだけで楽しいヨーロッパのオーディオ製品
 私がこれまで見聞したところでは、ヨーロッパでも、ずいぶんレコードは聴かれているが、まえにも書いたように、いわゆるオーディオへの関心はうすい。むきになってステレオの音質に血道をあげるのはわれわれ日本人と、アメリカ人ぐらいだろう。値段に見合うという意味で、国産品の音質は欧米のものと比べてもなんら遜色はない。リッパな音だ。
 ただし、カメラを持ち歩くのが嫌いなので写真に撮れないのが残念だが、ヨーロッパのアンプやレシーバーのデザインだけは、思わず見惚れるほどである。こればかりは、国産品もずいぶん垢抜けて来ているようだが、まだ相当、見劣りがする。B&Oの総合アンプやプレーヤーなど店頭で息をのんで私は眺め、見ているだけで楽しかった。アメリカのアンプにこういうデザインはお目にかかったことがない。
 オーディオ装置は、つづまるところ、聴くだけではなく、家具調度の一部として部屋でごく自然な美観を呈するものでなくてはなるまい。少なくともヨーロッパ人はそう思っているらしい。こうしたデザインは、彼らの卓抜な伝統にはぐくまれたセンスが創り出したもので、この点、日本やアメリカは逆立ちしてもまだかなわぬようである。

いい音を出すだけでは、音楽鑑賞は片手落ち
 本当はこういう美観も、レコード音楽では意外と音を美しく感じさせることに、日本のオーディオ・メーカーはもっと注意すべきだろう。
 自動車でいえば、日本のメーカーはやたらフォーミュラー・カーをつくりたがっている。たしかにマシンがよくなくてはいい乗用車はつくれないだろうが、われわれが望むのは、乗り心地のいい車であってレース用のものではない。第一、街ではスピードも出せやしない。必要なのは、まず乗り心地と、美観だ。
 装置のデザインの洗練味を、もっとメーカーは意図してほしいものである。このことは、やたらと“家具調”になることを欲しているのではないのは、もちろん言うをまたない。音を美しく聴くには、それなりの環境をととのえることもまた必要であり、だからこそ、いい音楽を聴く充実感も一層深まるのだ。
     *
「五味オーディオ教室」に写真はない。
B&Oの総合アンプやプレーヤーが、どれほど美しいのかを目にしていたわけではなかった。
想像していた。

「五味オーディオ教室」からそれほど経たずにB&Oの総合アンプやプレーヤーの写真を見た。
想像していたのとはまったく違っていた。
《店頭で息をのんで私は眺め、見ているだけで楽しかった》という五味先生の気持がわかった。

特にアナログプレーヤーのBeogramを美しく感じた。
そのころのB&Oのアナログプレーヤーは、三機種あった。
Beogram 3400、Beogram 4002、Beogram 6000で、
3400だけが違うデザインで、Beogramの象徴といえるリニアトラッキングアームを搭載していなかった。

私が息をのんで美しいと感じたのは、リニアトラッキングアームのBeogram 4002と6000だった。

1976年当時、リニアトラッキングアームのアナログプレーヤーといえば、
誰もがB&Oを思い出すくらいに、リニアトラッキング型の代名詞的存在でもあった。

B&O以外にもなかったわけではないが、
完成度の高さとデザインからいっても、リニアトラッキング=B&Oであった。

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