ステレオサウンドについて(その96)
ステレオサウンド 57号は、実のところ印象が薄い。
なにか手抜きをしているとか、そういうことではなく、なんとなくそう感じていた。
それでも特集のプリメインアンプの総テストはよく読んだ。
瀬川先生が、JBLの4343以外のスピーカーとしてロジャースのPM510も使われいてるからだった。
57号の試聴記を読んでも、テストの方法を読んでもわかるように、
常時鳴らされたのは4343と620Bで、このふたつのスピーカーを鳴らした結果で、
PM510をうまく(なんとか)鳴らしてくれそうなプリメインアンプだけ、試されている。
瀬川先生の試聴記には「スピーカーへの適応性」という項目がある。
ここにPM510の型番が登場するのは、ビクターのA-X7Dだった。
108,000円の中級機である。
「スピーカーへの適応性」のところにはこう書いてあった。
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アルテック620BカスタムやロジャースPM510のように、アンプへの注文の難しいスピーカーも、かなりの満足度で鳴らすことができた。テスト機中、ロジャースを積極的に鳴らすことのできた数少ないアンプだった。
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56号で、いつの日かPM510と思うようになっていた。
4343とPM510、両方欲しい、と思うようになっていた。
PM510を買えるようになったとしても、
すぐにこれに見合うだけのアンプを買えるわけでもないから、
当面はプリメインアンプで鳴らすことになるだろう、
なるほどビクターのA-X7Dだったら、そこそこ満足できそうだ……、
そんなことを夢見ながら、A-X7Dの試聴記を何度も読み返していた。
瀬川先生は特選とされている。
しかも試聴記の最後に、
《今回のテストで、もし特選の上の超特選というのがあればそうしたいアンプ》
とまで書かれている。
PM510にA-X7D、カートリッジに何にしようか。
カートリッジだけは少し奢って、EMTのXSD15か。
瀬川先生の試聴記には、
《ハイゲインイクォライザーも、ハイインピーダンスMCに対して十分の性能で、単体のトランスよりもむしろ良いくらいだ》とまで書かれている。
EMTのカートリッジは出力も大きい。
ゲインだけでなく、音質的にも問題なく使えるはずである。
この組合せが、57号のころの目標でもあった。