ステレオサウンドについて(その86)
ステレオサウンド 56号の表紙はトーレンスのReferenceである。
55号の表紙とはうってかわって、秋号らしい感じだった。
トーレンスのReferenceは56号ではじめて登場するプレーヤーだが、
55号のノアの広告には、登場していた。
モノクロの広告で、TD126MKIIICといっしょの広告で、
この時点では、Referenceについてのくわしいことはわからなかった。
価格は3,580,000円とあったから、
なにやらすごそうなプレーヤーが登場するんだ、というぐらいだった。
そのトーレンスのReferenceが56号の表紙である。
Referenceの詳細は、この号から新装となった新製品紹介のページではっきりする。
56号は55号からは変ってきていることが伝わってくる。
新製品紹介のページが、まさにそうだといえよう。
55号までの新製品紹介のページは、井上先生と山中先生のふたりが担当されていた。
もっと古い号では違うが、それまで長いことステレオサウンドの新製品紹介は、
このふたりの担当であり、海外製品は山中先生、国内製品は井上先生となっていた。
注目製品に関してはふたりの対談での紹介だった。
56号からのやり方が、いまにいたっている。
私も最初は、よりよい方向に変った、と喜んだ。
とくにトーレンスのReferenceを瀬川先生が担当されていたことも、大きい。
56号ではロジャースのPM510も登場していて、これも瀬川先生の担当。
このふたつの新製品の記事だけで、私は満足していた。
ステレオサウンド編集部はわかっている、そんなふうにも思ってしまったくらいに。
56号は1980年秋号。
もうこのやり方が30年以上続いていると、
井上先生、山中先生というふたりだけのやり方のメリットも大きかったことに気づく。
どちらのやり方がいいのかは、新製品品紹介のページだけで判断できることではない。
特集の企画とそこでのやり方、それに筆者の陣容とが関係しての判断となるわけで、
その視点からすれば、いまのステレオサウンドの新製品紹介のやり方は、
むしろ欠点が目立つようになってきている、といわざるをえない。