オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(ヤマハのA1・その5)
私がステレオサウンドを読みはじめたころのヤマハのプリメインアンプといえば、
CA2000かCA1000IIIが代表機種といえた。
CA2000のデザインは、中学生の目から見ても上品、洗練という表現が似合うと感じていた。
ステレオサウンド 42号のプリメインアンプ特集では、音室面でも高い評価を得ていた。
測定結果も、非常に優れたアンプであることがわかった。
いつかはセパレートアンプと思いつつも、現実にはプリメインアンプが先に来る。
CA2000はA級動作に切替えることもできた。
このことが、また中学生だった私には、とても魅力的だった。
ヤマハのCA2000を手に入れれば、とにかく不満なく聴ける──、
そう思っていた時期だ。
でも同時にCA2000には、色気や艶といった要素が、
磨き上げられている音質とは裏腹に欠けているような印象を、
瀬川先生の文章からも、つたない耳ではあっても実際に音を聴いても感じられた。
CA2000の優秀性をそのままに、色気、艶がもう少しだけ加わってくれれば……、
そんなことを思っていたところに、A1の登場だった。
それまでのヤマハのプリメインアンプの型番はCAがついていた。
アナログプレーヤーはYP、スピーカーシステムはNS、カセットデッキはTC、
ヘッドフォンはHP、チューナーはCT、スピーカーユニットはJAというように、
アルファベット二文字で始まっていた。
ただしセパレートアンプだけ違っていた。
CI、C2、BI、B2というようにアルファベットは一文字だけ。
C2とペアとなるチューナーT2もそうだった。
そこにA1という型番での登場。
C2はコントロールアンプのC、B2はベーシックアンプのBなのだから、
A1のAはアンプリファイアーの頭文字のはず──、中学生の私はそう受けとった。
しかもA1である。
このアンプならば、CA2000に欠けているものがあるのではないか。
その新鮮なフロントパネルの写真を見ながら、期待しはじめていた。