日本のオーディオ、これまで(パイオニア SH100・その4)
パイオニアの創立者である松本望氏は、1988年7月15日に逝去されている。
ステレオサウンド 88号に、菅野先生が「松本 望氏を悼む」を書かれている。
ここにステレオフォンSH100のことが出てくる。
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ステレオフォンという、たしか、昭和三十四年頃だったと思うが、ステレオレコードをサウンドボックスで再生する機械には、まだ強い執着をもっておられたようだ。アンプなしのアクースティック・ステレオレコード再生装置であったが、確かにダイレクトでピュアーな音がしたものだった。
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モノーラルのころからオーディオマニアだった人ほど、
モノーラルからステレオへの移行は遅かった──、という話を見たり聞いたりしている。
凝りに凝った再生装置をもうひとつ一組用意するのが大変だったのが、その理由である。
当時はメーカー製を買ってシステムを組むのではなく、
自作して、というのが主流であったからこその理由といえよう。
SH100はそういう人たちに、
ステレオレコードの良さを手軽に体験してもらおう、という売り方を行ったらしい。
それからオーディオマニアでない人たちにも、ステレオレコードという新しい体験をしてもらおう、
という意図もあったそうだ。
そのためもあってだろうか、それにアンプを必要としない、
というのが子供だましのように受け取られたのかもしれない。
SH100は決してそういうモノではないと感じていた。
松本望氏が、まだ強い執着をもっておられたということは、その証しといえるし、
菅野先生の《ダイレクトでピュアーな音がした》は、そのことを裏付けている、と受けとめている。