ダブルウーファーはロマンといえるのか(その9)
38Wといえば、菅野先生がスイングジャーナルでやられた実験的スピーカーもそうだった。
JBLのユニットを用いての4ウェイ、しかも全帯域ダブル使用である。
その時の音については、ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES-1にも書かれている。
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先日も、ウーファー部分発展の手がかりにと思い、ある雑誌の企画で♯2220を二本入れたエンクロージュアをECシリーズのバリエイションとしてサンスイに試験的に作ってもらった。この♯2220二発入りの4ウェイシステム(♯2220×2、♯2120×2、375+HL88×2、075×2、クロスオーバーは100Hz、800Hz、7kHz)を聴いたときは、実に、この世のものとも思えない低音の圧倒的音圧感に狂喜した。とにかくバスドラムが鳴った時の音などは本当によだれが出てきそうなくらいで、腹の底から喜びがこみ上げてくる素晴らしい音だった。
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ここまでのシステムではないが、4350Aで菅野先生録音の「The Dialogue」を聴いた時、
そのバスドラムの音には驚いたことがある。
4343とはミッドバスもミッドハイも違うけれど、ウーファーがシングルかダブルかの違い、
それに加えてバイアンプ駆動のメリットもあって、
《喜びがこみ上げてくる》という感じは、菅野先生が聴かれた音ほどではないにせよ、
確実にあった。
それでも菅野先生の、この実験的システムはやや大袈裟だ。
ミッドバス以上もダブルにする必要が、どこまであったのだろうか。
2120は25cm口径のユニット。
ここは4350と同じ2202(30cm口径)一発で十分だし、
375も一本でいいと思う。075はダブルでスタックすれば、その面白さはあるようには思うけれど。
菅野先生自身、続けてこう書かれている。
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ところが、家に帰って自分のウーファー一発のシステムを聴いてみると、あれはやはりオーバー・エクスプレッションだったと思うようになったのだ。部屋やアンプなども若干異なるので断定はできないが、二発入りだと、一人のベーシストが演奏しているにもかかわらず、あたかも巨人が演奏しているかのようで、パーソナリティが感じられないのである。そこが不満として感じられるようになってしまった。
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そうだろうと思いながらも、ウーファーだけダブルだったら……、とも思ってしまった。
全帯域ダブルの4ウェイシステムは、たしかにオーバー・エクスプレッションだろう。
それに片チャンネル八本のユニットとなると、その配置も格段に難しくなる。
それでも《この世のものとも思えない低音の圧倒的音圧感に狂喜した》、
ここのところに刺戟された(挑発された)人はきっといるはずだ。