マイクロフォンとデジタルの関係(その1)
Lytro(ライトロ)の製品は2011年に登場しているが、
Lytroの技術(撮影後にピント合せが可能)が話題になったのは、製品化の数年前だった。
そのころは理屈がどうなっているのかさっぱりだっただけに、
すごい技術が誕生したものだと思うとともに、
録音の世界では、同じこと、同じようなことが可能にならないのたろうか、と思っていた。
カメラのレンズにあたるのはマイクロフォンである。
マイクロフォンには指向特性がある。
たとえば音の焦点は変化できなくとも、指向特性を録音後に変えることはできないのだろうか。
そんなことを考えていたけれど、すっかり忘れていた。
LEWITTというメーカーがある。
LCT640TSというマイクロフォンがある。
今年発売になっている。
このマイクロフォンは、録音後にマイクロフォンの指向特性をシームレスに変更できる、という。
もちろんこのマイクロフォンだけで可能にしているわけではなく、
専用のプラグインを用いることでDAW(Digital Audio Workstation)上で可能になる。
CDが登場してしばらくしたころから思っていたのは、
マルチトラック録音を2チャンネルにトラックダウンせずに、
マルチトラックのまま聴き手に届く時代が来るかもしれない、ということだった。
再生にはコントロールのためのなにがしかの機械が必要となる。
コンピューターが、聴き手にとってミキシングコンソールになる。
もちろんレコーディングエンジニアによる2チャンネル再生も、
その音源からできる上に、聴き手が聴きたい個所をクローズアップできるように、
マルチトラックのそれぞれのチャンネルをいじれるようになってほしい、と思っていた。
けれどそういうことよりも、マイクロフォンの指向特性が録音後に変更できることは、
別の可能性を聴き手にもたらしてくれる。
そういうふうになるのかどうかははっきりしないが、
少なくとも技術的には可能になってきている。
マイクロフォンがデジタル信号処理と結びつくことで、
アナログ時代では無理だったことが可能になりつつある。
マイクロフォンアレイも、そのひとつである。