2016年ショウ雑感(その18)
アキュフェーズのブースでヤマハのNS5000を聴いて最初に感じたのは、
聴感上のS/N比が向上している、ということだった。
同じことを、ヤマハのブースでも感じた。
あくまでもインターナショナルオーディオショウでの印象なのだから、
断定的なことはいえないが、ほぼ間違いなく聴感上のS/N比は向上している、とみていいはず。
聴感上のS/N比については、これまでも書いてきた。
基本的に聴感上のS/N比を向上させるのは、いいことというか、正しいことといっていい。
けれどヤマハのブースで聴いていて感じたのは、
わかりやすい聴感上のS/N比の向上のような気がした。
このことになると厳密な一対比較でなければはっきりとしたことはいえないのはわかっている。
それでも、そう感じたのは、
どのディスクも空調のきいたスタジオで演奏しているように聴こえるからだ。
音楽は肉体運動から奏でられる。
人はただ立っているだけでも熱を発している。
まして楽器を弾くという運動がくわわれば、発せられる熱量は増す。
人が多ければそれだけ熱量は増える。
にも関わらず完成品のNS5000で鳴らす音は、そこのところが希薄になっている。
演奏という肉体運動で熱量が増しても、それに応じて空調の効きも増して、
その熱量を抑え込んでしまう、とでもいおうか、そんな感じがした。
試作品のNS5000も、いわゆる熱い音を聴かせるタイプではない。
それでも完成品のNS5000ほど稀薄ではなかった……はず、と思いながら聴いていた。
わかりやすい聴感上のS/N比の向上は、
NS5000を優秀なスピーカーという領域に留めてしまったのではないだろうか。
優秀なスピーカーは、他にもいくつもある。
そこにNS5000というスピーカーが加わっただけではないのか。