Date: 9月 11th, 2016
Cate: 菅野沖彦
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菅野沖彦氏のスピーカーのこと(その15)

スピーカーユニットを多数使うことに、別に懐疑的ではない。
けれど、若いころは、それこそ絶対的にスピーカーユニットは並列接続すべきだと考えていた。

そう思いこんでいたのは、振動板はピストニックモーションが理想であり、
振動板がピストニックモーションであれば、
その振動板が鳴らす空気もピストニックモーションである──、
そう考えていたからでもあった。

けれどピストニックモーションの幻想から一歩離れてしまえば、
振動板のピストニックモーション・イコール・空気のピストニックモーションではないことは、
容易に想像がつく。

けれど、その一歩離れることが、なかなか難しかったし、
そのきっかけとなったのが、私の場合、(その14)で書いているように1996年、
NTXスピーカーの登場まで俟たなければならなかった。

ピストニックモーションこそが……、という思いこみは、
XRT20を眺めたときに、24個のトゥイーターを並列接続にすべき、と見てしまっていたし、
XRT20以前のスピーカー、BOSEの901に関して、同じに見てしまっていた。

901は10cm口径のフルレンジユニットを9発使っている。
使用されているスピーカーユニットのインピーダンスは0.9Ω。
9発すべてを直列接続しているから、0.9×9=8.1Ωとなる。

901の存在を知ったとき、おもしろいスピーカーと思いながらも、
私だったら、絶対的に並列接続するのに、その方が絶対音は良くなるのに……、
不遜にもそう捉えてしまっていた。

振動板を動かすことと空気を動かすことは、同じではない。

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