柔の追求(その9)
昨夜のaudio sharing例会の「主役」は、
ハイルドライバー(Air Motion Transformer)といえる。
五年前、ADAMのスピーカーについて書いたことに対して、ある方からコメントがあった。
ADAMはAMTユニットをX-ARTと、エラックはJETと呼んでいるが、
この方式・原理をリボン型と同じだと考えている人からのものだった。
たしかにダイアフラムは、どちらもリボンと呼べるところがある。
けれど動作原理はまったく違う。
ダイアフラムの形状が似ているからといって、動作方式まで同じと考えるのは短絡的すぎる。
そのときも書いたのだが、いまAMTに関する技術解説を行っている記事があるだろうか。
エラックのCL310が登場したのは1998年。
そのときから今日まで、オーディオ雑誌でこの方式についてきちんと解説されただろうか。
やっと登場した記事が無線と実験、2015年の記事である。
その他にあっただろうか。
リボン型とAMTは、はっきりと違う。
このことは何度でも書いていく必要があるのかもしれない。
しかも以前の記事でも、この方式への誤解もあった。
ステレオサウンド別冊HIGH TECHNIC SERIES、トゥイーターを取り扱った三冊目の巻末には、
ダイヤトーン(三菱電機)の技術者だった佐伯多門氏が、
トゥイーターの基礎知識として、
コーン型をはじめ、ドーム型、ホーン型、リボン型、コンデンサー型など、
ほぼすべての動作原理を解説されていた。
ハイルドライバー(AMT)についての解説もあった。
ハイルドライバーの構造図もあった。
構成要素に短い解説がついた厨である。
ダイアフラムのところにはこう書いてあった。
《背面も前面と同じ特性の音波を放射する(背面は逆相となる)》
これは間違いである。
本文は佐伯多門氏が書かれているのははっきりしているが、
構造図の解説は佐伯氏によるものなのか、ステレオサウンド編集部によるものなのかはわからない。
ここにもハイルドライバーをリボン型と同じに捉えているための誤解がある。
リボン型は背面に、前面と逆相の音を放射する。
けれどハイルドライバー(Air Motion Transformer)では、
前面と背面の音は同相である。