Date: 7月 26th, 2016
Cate: 「オーディオ」考
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額縁の存在と選択(その4)

VR(仮想現実、Virtual Reality)という言葉が広まったのは、
どのくらい前になるのだろうか。十年は優に過ぎている。二十年いくかいかないかだろうか。

オーディオは仮想現実なのだろうか、とある知人が問いかけてきた。
彼はそう思いたがっていたようだが、私は違う、といった。
彼はくいさがる。オーディオはなんらかの現実ではないのか、と。

それはそう思う、と答えたけれど、ではどういう現実なのか、とは答えられなかった。
いまならば、拡張現実のひとつだろう、と答えるところだろう。
そして、瀬川先生の、この発言、
《荒唐無稽なたとえですが、自分がガリバーになって、小人の国のオーケストラの演奏を聴いているというようにはお考えになりませんか。》
を言った後で、LS3/5Aでの再生を例に出す。

LS3/5Aを、左右の間隔をあまり開けすぎず、しかも近距離で正三角形の頂点で聴く。
音量もあまりあげない。ひっそりとした音量で聴くLS3/5Aの世界は、
井上先生は「見えるような臨場感」、「音を聴くというよりは音像が見えるようにクッキリとしている」と、
瀬川先生は「精巧な縮尺模型を眺める驚きに緻密な音場再現」、
「眼前に広々としたステレオの空間が現出し、その中で楽器や歌手の位置が薄気味悪いほどシャープに定位する」、
と表現されている、そのものの世界を聴かせてくれる。

井上先生も瀬川先生も、視覚的イメージにつながる書き方をされている。
そう、ごく至近距離に小人のオーケストラが現出したかのような錯覚をおぼえるわけだ。

左右のスピーカーのあいだ(それはLS3/5Aの場合1mほどだ)に、
小人のオーケストラがいると感じられるのは、拡張現実といっていいのではないだろうか。

私はPokémon GOをやっていて、
iPhoneが表示するまわりの景色の中にポケットモンスターが現れるのを見て、
まず感じたのは、LS3/5Aのことと小人のオーケストラのことだった。

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