Date: 6月 27th, 2016
Cate: オーディオマニア
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どちらなのか(その6)

レコード演奏とは、レコード(録音物)を再生することである。
LPにしろCDにしろ、その他のメディアにしても、
演奏する、といっても、ただ再生しているだけではないか、という反論は以前からある。

レコード演奏、レコード演奏家という表現は菅野先生が提案されているが、
実はそれ以前にも「レコードを演奏する」という表現は瀬川先生によって使われていた。

瀬川先生にとっては、レコードをかける、という行為は、演奏する、ということだったわけだ。

瀬川先生、菅野先生のようにはっきりと言葉にしなくとも、
そういう意識でレコードをかけている人はいるはずだ。

こんな経験をしたことがある。
ある人のリスニングルームで、グレン・グールドのゴールドベルグ変奏曲を聴いた。
グールドのディスクをかける、ということは音が鳴ってくる前からわかっていた。
それでも、鳴ってきた音は、まるでおそまつなテクニックのピアニストのようだった。

ゆったりしたテンポの変奏の場合がそうだった。
音がとぎれとぎれに聴こえてくる。
速いテンポで弾けないから、遅いテンポで弾いている。
そんな感じのする演奏になってしまっていた。

そこには深遠さは、すっかり霧散していた。
どうしてこういう演奏に堕してしまうのか、と思わず言ってしまいたくなるほどだった。

その人のシステムは、かなりのモノを組み合わせていた。
調整も熱心にやられていたように思われた。
オーディオへの思い入れも強いようだった。

それでも……、だった。
そこにグレン・グールドによるゴールドベルグ変奏曲の音楽的感銘はなかった。

オーディオは時として、こういうふうに音楽的感銘を著しくそこなうことがある。

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