Hi-Resについて(その7)
ステレオサウンド 57号の表紙はハーマンカードンのCitation XXだった。
マッティ・オタラのインタヴュー記事の最後に、
(編注=ハーマン・カードンXXの詳細については次号に掲載予定です)とあった。
58号の表紙はスレッショルドのパワーアンプSTASIS 1だった。
新製品紹介のページに、Citation XXは登場していなかった。
ということは次号(59号)か、と思った。
59号の表紙はJBLの4345だった。
この号でもCitation XXの姿はなかった。
Citation XXが新製品紹介のページに登場したのは60号だった。
長島先生が書かれている。
カラーで4ページ割かれている。
写真をみるかぎり、57号の表紙との違いはない。
にもかかわらず、ここまで発売がずれこんだのは最終的なチューニングのためであろう。
Citation XXの製造は日本の新白砂電気が行っている。
回路設計はマッティ・オタラで、Citation XXの開発がスタートして以来、
日本とフィンランドを幾度となく往復して二年有余の歳月が費やされた、との説明文がある。
井上先生が何度かステレオサウンドに書かれているように、
Citation XXはネジの締付けトルクを管理した初めてのアンプでもある。
60号の記事には、Citation XXのブロックダイアグラムが載っている。
入力信号はまずINFRASONIC、ULTRASONIC、ふたつのフィルター回路に入る。
フロントパネルのボタンでON/OFFできるようになっているだけでなく、
フィルターを必要とする状況では、それぞれのインジケーターが赤色に点灯するようになっている。
INFRASONICは1Hz以下の周波数を6dBでカットしている。
ULTRASONICは100kHz以上を、2次のベッセル型でカットしている。
記事を読んだ当時は気づかなかったけれど、
ここでベッセル型を採用しているところが、マッティ・オタラらしい、といまは思う。
INFRASONIC、ULTRASONICのあとは500kHz以上をカットするフィルターが設けられている。
こちらはON/OFF機能はない。
ステレオサウンド 57号のインタヴュー記事は、テクニカルノートという連載記事のひとつである。
57号では、この他に、松下電器産業の藤井喬氏によるテクニクスのリニアフィードバック回路の記事、
日本ビクターの藤原伸夫氏によるピュアNFBについての記事もある。
藤原氏が、次のように述べられている。
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藤原 TIM歪というのは、アンプ内の立ち上りのスピードと入力の立ち上りのスピードとの間にある関係があり、アンプ内部での立ち上りよりも速い信号に対しては歪みが出るけれども、それ以下の信号だとゼロになってしまう特徴があるのです。私どものTIM歪判断の基準として、たとえば入力に100kHzの高域をカットするフィルターを入れた状態で、立ち上り無限大の理想的な矩形波を入れる。立ち上り無限大の矩形波は、100kHzのフィルターを通すと、立ち上りがある程度なまるわけですが、実際の音楽信号でこのような無限大の立ち上りをもつ進行は存在しません。実際に音楽のレベルなどをいろいろ検討しても、100kHzのフィルターというのは、音楽信号の立ち上りに対するマージンをとったとしても十分すぎるマージンがあるので、TIM歪みに対しては100kHzのフィルターを入力に入れれば対処できるのではないかという考えが多いようです。ですから、現存するどんなアンプでも無限大の立ち上りの信号を入れれば、すべてTIM歪的なものが出てきてしまいますので、入力フィルターをいくらにとるかということが一つの基準のようになっているのです。
私どもでは、入力に100kHzのフィルターを入れていますので、音楽信号に対してはTIM非済みゼロであると宣言しています。
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ここでも100kHzのフィルターが登場している。