録音評(その4)
銀座に行くこと(そこで買物をすること)と輸入盤を買うことは、
当時の私にはしっかり結びついていることだった。
銀座は東京にしかないし、
当時、私が住んでいた田舎では輸入盤のLPはほとんどなかった、といえるからだ。
LP(アナログディスク)を買うならば輸入盤。
これは東京に出てくる前から、そう決めていた。
クラシックならば、絶対に輸入盤。
輸入盤が廃盤になっていて、それがどうしても聴きたいディスクであるときは、
しかたなく日本盤を買っていたけれど、
そうやって買ったものでも、輸入盤をみかけたら買いなおしていた。
これは刷り込みのようなものだった。
五味先生の文章、瀬川先生の文章によって、
クラシック(他の音楽もそうだけれど)は、特に輸入盤と決めていた。
それは音がいいから、だった。
もっといえば、音の品位が輸入盤にはあって、日本盤にはなかったり、低かったりするからだ。
輸入盤と日本盤の音の違いは、もっとある。
それに場合によっては、輸入盤よりもいい日本盤があることも知っているけれど、
総じていえば、輸入盤の方がいい。
その輸入盤の音の良さは、いわゆる録音がいい、というのとはすこし違う。
録音そのものは輸入盤も日本盤も、基本は同じだ。
もちろん日本に来るカッティングマスターは、
マスターテープのコピーであり、そのコピーがぞんざいであったり、
丁寧にコピーされていたとしても、まったく劣化がないわけではない。
それに送られてきたテープの再生環境、カッティング環境がまったく同じというわけでもない。
海外にカッティングしメタルマザーを輸入してプレスのみ日本で行ったとしても、
レコードの材質のわずかな違いやプレスのノウハウなどによっても、音は違ってくる。
そうであっても大元の録音は、輸入盤も日本盤も同一であり、
そこから先のプロセスに違いがあっての、音の違いである。