マランツ Model 7はオープンソースなのか(その3)
ウィリアムソンアンプはイギリスから登場した。
ほぼ同時代にアメリカからはオルソンアンプが登場している。
向うを張る、という表現があるが、
オルソンアンプはまさしくウィリアムソンアンプの向うを張る、といえるパワーアンプである。
オルソンアンプはRCAのスピーカーLC1による生演奏すり替え実験に使われていることでも知られている。
ウィリアムソンアンプとは、違いはどこにあるのか。
似ているところもある。
位相反転はどちらもP-K分割である。
出力段はどちらも三極管接続である。
電圧増幅段にはどちらも6J5と6SN7が指定されている。
けれど決定的に違うのは、オルソンアンプは無帰還アンプであるということ。
三極管接続した6F6を四本使ったパラレルプッシュプルで、出力は5W。
ここもウィリアムソンアンプと違うところである。
出力段のバイアスも違う。ウィリアムソンアンプは固定バイアス、オルソンアンプは自己バイアス。
よってオルソンアンプにはDCバランスの調整もない。
電源部もウィリアムソンアンプはコンデンサー入力のチョークコイル使用に対して、
オルソンアンプはチョークコイルを省いている。
ウィリアムソンアンプの追試・実験は当時の日本では困難であったが、
オルソンアンプはそうではないように、一見思える。
出力トランスの問題もないし、チョークコイルも不要だし、
アンプ製作にかかるコストも負担が少ないオルソンアンプはすんなり作れたか、というと、
どうでもそうではなかったらしい。
まず電源部。
オルソンアンプは450WV・50μFのコンデンサーを使っている。
チョークコイルを省いているための、この容量であるわけだが、
当時の日本製の電界コンデンサーで、
この規格のものとなると入手困難か非常に高くつくものであったらしい。
それだけでなく出力段の6F6の使い方も、
アメリカ製の6F6の使用を前提としているため、
日本製の6F6を使ってオルソンアンプをそのまま作ってしまうと、
最大定格以上のプレート電圧がかかってしまうため、わずか数日で6F6がダメになってしまう、とのこと。
RCAの6F6を使えば問題なく動作するそうだ。
いまならばオルソンアンプをそのまま再現することは特に難しいことでない。
けれどウィリアムソンアンプ、オルソンアンプが発表された1950年ごろの日本は、そうではなかった。