Date: 4月 26th, 2016
Cate: 世代
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世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その9)

ステレオサウンド 72号掲載「エキサイティング・コンポーネントを徹底的に掘り下げる」を読まれた方、
記憶されている方は、GS1がどんなふうに開発されていったのかが写真からわかる。

GS1はオールホーン型という,1980年代では希少ともいえる構成を採用している。
そのため基本的にはエンクロージュアというものを必要としない。
ここが一般的なスピーカーの開発と大きく異っている点のひとつであり、
このことがGS1に最後まで残っている点でもある。

ステレオサウンド 72号で菅野先生が書かれているし、
73号でもそのことは座談会で指摘されている。
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柳沢 その実力という点で、ゴールデンサウンド賞には異論はないんですけれども、あえて言うならば、メーカーであのスピーカーを聴かせていただくときに、必ずサランネットをはずして聴かせるんですよね。
「ネットをつけて聴かせてくれ」って言ったら、「嫌です」と言うわけです。「なぜ」と言ったら、「ネットをつけると極端に特性が落ちるんで、お聴かせしたくない」と。
 それは、あのスピーカー全体でやろうとしている考え方に二面性みたいなものがあって、特性的、音質的によりピュアなものを追求したいということと、それから妙にウッドを使って、インテリア風デザインも美しくしたいという、その変に矛盾があって、それはぼくは製品としては、もう一つ完成しきれてないところではないかと思うんです。
 少なくとも あの低音ホーンの恰好でむき出しにして使うというのは、相当、異様なスピーカーと受けとれるんですよね。その辺はもう一歩まとまりを良くして欲しいところなんです。
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この柳沢氏の指摘を、井上先生が表現をかえて発言されている。
それも引用しておく。
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井上 柳沢さんの言ったことの裏返しなんですが、もともと、ホーンだけの裸の恰好が最初のスタートで、それにジャケットをはめて製品化しようとしたプロセスに問題があるのだと思う。だから、商品にするのは、もともと難しいものなんですよ。シンプルな恰好から始めたわけですから。そこのつらさだと思います。
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GS1はウーファー用とトゥイーター用のふたつのブロックからなる。
トゥイーター用ブロックの上にはガラス板がある。
エンクロージュアの天板にあたるところがガラス板というわけだ。

このガラス板は簡単に取り外せる。
このガラスがなくなるとトゥイーターホーンの外側が見えるわけで、
見た目の印象はあまりよくない。
けれど音を出してみると、たったガラス板一枚を取り除いただけなのに……、といいたくなるほどの変化がある。
もちろんいい方向への変化であり、
この音の変化は井上先生の発言を裏付けている、ともいえる。

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