Date: 4月 25th, 2016
Cate: 世代
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世代とオーディオ(あるスピーカーの評価をめぐって・その8)

オンキョーはGS1を鳴らすためのパワーアンプとして、GrandIntegra M510を開発した、といっていい。
ただGrandIntegra M510とペアとなるコントロールアンプは出なかった。

オンキョーの型番のつけ方からすると、GrandIntegra P310がそうなる。
GrandIntegra P310を出さなかったからといって、
オンキョーという会社がGS1というスピーカーの扱いを冷遇していたとはいえない。

広告に関しても、あれだけの予算を割いている。
開発費に関してもそうだといえる。

ステレオサウンド創刊20周年別冊「魅力のオーディオブランド101」で、
オンキョーの取締役社長である五代武氏が語られている。
     *
柳沢 GS1をつくられましたけど、あれはオンキョーが燃えたのか、五代さんが燃えたのか。
五代 あれは、私が、断固継続させたのです。GS1研究には経費がかかりましたし、社内ではいろいろ言っていたようです。私は断固、GS1の研究開発予算は削るな、ということを言いました。私はGS1で、全体のレベルをもう一段あげようと考えていたんです。あれは、私のわがまま。創業者だからできたんでしょう。
     *
「魅力のオーディオブランド101」では、菅野先生と柳沢氏がオンキョーの試聴室に出向かれている。
オンキョーの試聴室は二つ。

ひとつはGS1のための部屋であり、つまりは由井啓之氏の研究室である。
もうひとつはオンキョーの商品開発部の試聴室で、
こちらでは開発中のプロトタイプのScepter 5001を聴かれている。

このふたつの試聴機器のリストも載っていて、興味深い。
GS1の方は、アナログプレーヤーがマイクロのSZ1TVS+SZ1M、トーンアームが SMEの3012R Pro、
カートリッジはIkeda 9、コントロールアンプはアキュフェーズのC280、
パワーアンプはGrandIntegra M510、CDプレーヤーもオンキョーのIntegra C700。

Scepter 5001の方はすべてオンキョーの製品で揃えられている。
Integra C700、Integra P308、integra M508である。

試聴ディスクはGS1の方は試聴機器からもわかるようにアナログディスク中心であり、
Septer 5001はCDのみである。

同じ会社内のことであっても、ずいぶんと違う。
そういう違いを、当時のオンキョーは、許していたということになる。
《社内ではいろいろ言っていたようです》も、なんとなく伝わってくる。

オンキョーは、少なくとも外からみるかぎり、GS1の開発に力を抜くことなくやっていた、と感じた。
ステレオサウンドでの評価も高かったし、
ステレオサウンドの扱いも多かった。それは他のメーカーが羨ましく思うほど誌面に登場していた。

けれどGS1は、さほど売れなかった。
売れなかった理由は、日本での評価が低かったわけでもないし、
オンキョーのサポートが積極的でなかったわけでもない。

結局のところ、売れなかった理由はGS1そのものにあったし、
その聴かせ方にもあった、といえる。

だから、この項を書いているのだ。

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