真空管アンプの存在(その16)
伊藤先生を始めとする真空管アンプの製作記事に共通していえるのは、プリント基板を使ったものは、
私が当時見たかぎりではひとつもなかった。
トランジスターアンプでは、プリント基板を使うのが、メーカー製でも自作でも当然だが、
真空管アンプでは使用パーツ点数がトランジスターアンプに比べてそれほど多くないこと、
真空管まわりのパーツも、ソケットとラグ板を利用することで、
プリント基板を使う必要性があまりないこともあってのことだろう。
それにマランツやマッキントッシュの真空管アンプも使っていなかった。
だから真空管アンプ・イコール・プリント基板レスというイメージができあがっていた。
もちろん配線の美しさに、つくった人の技倆がはっきりと現われるけれど。
サウンドボーイ誌には、伊藤先生のワイヤリングを、「美しく乱れた」と表現してあり、
まさしくそのとおりだな、と納得したものだ。
手配線は、つくる人の技倆によって出来不出来が、多少ならずとも生じてしまう。
メーカーが、同じ性能をモノをいくつもつくらなければならない、
そのためにプリント基板を使うのは理解できる。
それでも、当時のアメリカから登場した新興メーカーの真空管アンプの内部のつくりは、
写真を見ると、かなりがっかりさせられた。