日本のオーディオ、これから(ハイテクと呼べるモノ)
ハイテク(high-tech)。
ハイテクノロジー(high technology)の略であり、
1980年代はよく使われた言葉だったが、いまではあまりみかけることもなくなっきた。
以前はハイテク・オーディオ機器はアンプだっただろうし、
CDプレーヤー登場以降は、CDプレーヤーを始めとするデジタル機器であり、
いまではハイレゾリューション対応であることが、
一般的にはハイテク・オーディオ機器ということになるであろう。
けれどスピーカーこそがハイテク・オーディオ機器という捉え方も可能である。
1980年代にはいり、新素材の積極的な活用が目立ってきた。
それ以前にも新素材の採用に、オーディオ業界は積極的であった。
スピーカーの振動板に限らず、カートリッジのカンチレバーやトーンアームの分野でも、
新素材の採用は活発だった。
1970年代、スピーカーシステムにおいてはウーファーに関しては、紙の振動板が大半だった。
それが’80年代からウーファーへも新素材が採用されることになる。
この新素材の採用という点からスピーカーをとらえれば、
スピーカーシステムこそがハイテク・オーディオ機器ともいえることになる。
もっともこのことは1980年代にダイヤトーンの技術者によって指摘されていることである。
1986年のステレオサウンド創刊20周年記念別冊「魅力のオーディオブランド101」で、
ダイヤトーンのスピーカーエンジニアの結城吉之氏が語られている。
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結城 ハイテク時代といわれていますが、素材のほうから見れば、いまやスピーカーはハイテク商品なんですね。
菅野 ある点では一番原始的ですけど、確かにハイテク商品です。
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新素材を採用しただけでハイテク・オーディオ機器となるわけではない、もちろんない。
新素材の特質を活かした形状、構造、使い方を吟味した上で、はじめてハイテクと呼べる。
ダイヤトーンの結城氏の発言はいまから30年前のもの。
けれど、いまもう一度、考えてみるべき価値のある発言だと思っている。