リファレンス考(その7)
セパレート型のCDプレーヤーがある。
当時、音質が素晴らしいと話題になった機種である。
ステレオサウンドの試聴室でもリファレンスCDプレーヤーのひとつとして使っていた。
私が働いていたころは、ステレオサウンドは10時が出社時間だった。
試聴のある日は、朝一で試聴の準備を始める。
器材のセッティングが終ったら、きちんと鳴るかどうか音を出す。
その確認が終ったら、電源は入れっぱなしにしておく。
試聴はふつうは後一から始まる。
たいてはそれほど遅くならずに終る。
17時くらいに終ったとして、試聴器材に電源が入っている時間は八時間ほど。
このくらいだと問題は生じなかったのだが、
それ以上の試聴で、しかもアンプやスピーカーの試聴であれば、
CDプレーヤーは固定でずっと動作させることになる。
そうすると、そのCDプレーヤーの稼働時間は十時間を超える。
試聴が夜遅くまでかかると、もっと稼働時間は長くなる。
試聴だから、CDプレーヤーはほとんど再生状態にある。
そうすると、音がダレてくることがあるのに気づく。
私だけがそう感じていたのではなく、他の人も感じていた。
そんなときCDプレーヤーの天板はけっこう熱くなっている。
しかたないので一旦電源を切り、温度が少し低くなるのを待って試聴を再開した。
ダレた感じはなくなっていた。
そうなると長時間の稼働にともなう温度上昇による音の変化だと考えられる。
こういう使い方は家庭ではあまりないのかもしれない。
だからそういう使い方では気づかないであろう。
だが試聴室のリファレンスとなると、そうではない。
こういう使い方をすることがあり、
そういう使い方をしても音の変化幅が小さく安定しているモノが望ましい、となる。