コントロールアンプと短歌(その4)
ステレオサウンドのバックナンバーを読み返していると、
いまになって気づくことがある。
ヤマハのコントロールアンプCX10000のことを、いま思い出している。
CX10000はヤマハ創業100周年記念モデルとして、1986年に登場した。
CX10000の他に、パワーアンプのMX10000、CDプレーヤーのCDX10000、
スピーカーシステムのNSX10000があった。
100周年を記念しての10000番シリーズの中で、いま注目したいのはCX10000である。
CX10000は、デジタル信号処理を採り入れたコントロールアンプである。
CX10000の登場からいまでは約30年が経過している。
デジタル信号処理の進化はすごいものがあった。
だからCX10000のデジタル信号処理の性能、それと音について語ろうとは思っていない。
ここでのテーマである「コントロールアンプと短歌」ということで、
CX10000を見直すことができないか、と思っている。
CX10000はブロックダイアグラムをみれば、アナログ系は実にシンプルになっている。
そこにデジタル信号処理が加わり、当時としてはかなり複雑(細かな)なことが可能になっていた。
1986年当時はiPadもiPhoneは、それこそ影も形もなかった。
つまりデジタル信号処理に関する操作は、すべてコントロールアンプだけで完結している必要があった。
タブレットのようなタッチディスプレイもなかった。
CX10000にはふたつのディスプレイがついているが、
どちらも数字と文字だけの表示である。表示領域も狭いし、モノクロ表示である。
CX10000はレベルコントロールだけがロータリー型で、
あとはすべてプッシュボタンである。
ただ正確にいえばバランスコントロールもロータリー型であるが、
フロントパネルにはなく、右前脚の隣にひっそりとつけられている。
ボタンを多用したコントロールアンプとしては、
CX10000の前にアキュフェーズの C240があった。
C240はレベルコントロール以外のすべてボタンにはしていなかった。
CX10000の写真をみながら、いまごろ思っているのは、
CX10000のデザインに関する苦労である。
いまならばiPadにインターフェースをすべてもっていって、
コントロールアンプ本体は、いわゆるブラックボックス化していくだろうが、
1986年はそういうわけにはいかない。
少ない情報量のディスプレイといくつものボタンとその操作だけで、
CX10000の多機能を、使い手に直感的に理解してもらう必要がある。