オーディオマニアとして(ある番組をみていて思ったこと)
もう10年以上の前で、いつ見たのか正確には憶えていない。
NHKで、ある実験のドキュメンタリー番組があった。
その実験が意味するところは最先端すぎて私には理解できなかったし、
その実験が成功すれば世界初だということだけは憶えている。
その実験機材の様子が映されていた。
それを見て、私は失敗するな、と思っていた。
オーディオマニア的観点からすれば、絶対にいい音が出ないセッティングだったからだ。
世界初の実験だから、いろいろな器材が段階段階で足されていったように見えた。
配線もぐちゃぐちゃになっている。
オーディオ機器をこんなセッティングでこんなにぐちゃぐゃちの配線をしてしまったら、
そこでのオーディオ機器がどんなに高性能なモノであっても(むしろ高性能であればあるほど)、
その良さを活かすことはできない。
配線さえ間違えなければ音は出る。
出るけれど……、というレベルの音でしかない。
テレビに映っていた実験もそれに近いというか、まったく同じといいたくなる状態だった。
実験は失敗だった。
私はそうだろう、と思って見ていた。
この実験室にはオーディオマニアがひとりもいないんだな、と思って見ていた。
実験はすべての器材がいったんバラされ、一から実験機材のセッティングが始まった。
今度は、以前の状態とはまったく違う、きちんと整理されぐちゃぐちゃの配線も、
少なくともテレビの画面からは伺えない状態に仕上げられていた。
実験は見事成功。
最先端の実験なのだから、細かな、デリケートなところが影響しての失敗だったのだろう、
とオーディオマニアの私は思っていた。