オーディオと「ネットワーク」(おさなオーディオ・その3)
もう十年ほど前になるけれど、菅野先生と話していた時に、
このケーブルの這わせ方が話題になった。
菅野先生は多くのオーディオマニアのリスニングルームを訪問されている。
ステレオサウンドのベストオーディオファイルでの訪問、
レコード演奏家での訪問、
ステレオサウンドだけに限っても、このふたつの企画に登場されたオーディオマニアの数は非常に多い。
菅野先生が訪問されているのはステレオサウンドの取材だけではない。
他のオーディオ雑誌の企画でも訪問されているし、
それ以外での訪問はあったはずだ。
いったい何人のオーディオマニアのところに行かれたのだろうか。
私よりも二桁は多いのではないだろうか。
菅野先生がいわれた。
「部屋の真ん中を大蛇のようなケーブルが這っているところでまともな音がしたためしはない」と。
大蛇のようなスピーカーケーブルとは、
非常に高価すぎるといえるケーブルのことである。
そんな這わせ方ができるのは、専用のリスニングルームであることが大半だろう。
リビングルームとリスニングルームを兼用していては、
そんなケーブルの這わせ方をしていたら、家族からクレームがきてしまう。
音のために専用のスペースを用意して、
音のために高価な装置を揃え、さらに高価なケーブルを買い求める。
それは生半可な気持ではできないことである。
だから茶化そうとは思っていない。
ただ問題としたいのは、そういうケーブルを使うことではなく、
そういうケーブルの這わせ方である。
菅野先生は、そういうケーブルを使っているところでまともな音がしたためしはない、
といわれたのではない。
あくまでも部屋の真ん中を這わせているところで……、である。
私が「おさなオーディオ」という造語を思いついたのは、この話を聞いてからである。