Date: 7月 15th, 2015
Cate: 4350, JBL, 組合せ
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4350の組合せ(その6)

ステレオサウンド 52号で瀬川先生は、マークレビンソンのML6のことを書かれている。
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 新型のプリアンプML6Lは、ことしの3月、レビンソンが発表のため来日した際、わたくしの家に持ってきて三日ほど借りて聴くことができたが、LNP2Lの最新型と比較してもなお、歴然と差の聴きとれるいっそう透明な音質に魅了された。ついさっき、LNP(初期の製品)を聴いてはじめてJBLの音が曇っていると感じたことを書いたが、このあいだまで比較の対象のなかったLNPの音の透明感さえ、ML6のあとで聴くと曇って聴こえるのだから、アンプの音というものはおそろしい。もうこれ以上透明な音などありえないのではないかと思っているのに、それ以上の音を聴いてみると、いままで信じていた音にまだ上のあることがわかる。それ以上の音を聴いてみてはじめて、いままで聴いていた音の性格がもうひとつよく理解できた気持になる。これがアンプの音のおもしろいところだと思う。
 ともかくML6の音は、いままで聴きえたどのプリアンプよりも自然な感じで、それだけに一聴したときの第一印象は、プログラムソースによってはどこか頼りないほど柔らかく聴こえることさえある。ML6からLNPに戻すと、LNPの音にはけっこう硬さのあったことがわかる。よく言えば輪郭鮮明。しかしそれだけに音の中味よりも輪郭のほうが目立ってしまうような傾向もいくらか持っている。
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また《ML6がML2Lの内包している音の硬さを適度にやわらげてくれる》とも書かれている。

瀬川先生と井上先生は、同じことをML6に関して言われている。
同時にふたりの違いもまた読み取れる。

4350Aではないが、4343の組合せを「続コンポーネントステレオのすすめ」でいくつかつくられている。
そのなかに4350Aの組合せとほぼ同じ例があり、
そこには「あくまでも生々しい、一種の凄みを感じさせる音をどこまで抽き出せるか」とある。

ここでの組合せはEMTのアナログプレーヤー950に、
アンプはマークレビンソンのML6とML2のペアである。

井上先生はリアリティのある音で聴きたいということでML6からマッキントッシュのC29に、
コントロールアンプを換えられた。
瀬川先生は、あくまでもパワーアンプにML2を使うことが前提ではあるものの、ML6を選択される。

《あくまでも生々しい、一種の凄みを感じさせる音》も、
リアリティのある音であり、それは《もはやナマの楽器の実体感を越えさえする》音でもある。

井上先生は「コンポーネントステレオの世界 ’80」で、C29とML6を水に例えられてもいる。
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たとえていうと、マークレビンソンの音が、きわめて純度の高い蒸留水だとすれば、マッキントッシュC29+MC2205の音は、鉱泉水、つまりミネラルウォーターのような、そんな味わいをもっています。自然の豊かさの魅力、とでもいったらいいでしょうか。
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アンプの音を水に例えるのは、瀬川先生も52号の「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」の最後でやられている。
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 アンプの音に、明らかに固有のクセのあることには、わたくしも反対だ。広い意味では、アンプというものは、入力にできるだけ正直な増幅を目ざすべきだ。それはとうぜんで、アンプがプログラムに含まれない勝手な音を創作することは、少なくとも再生音の分野では避けるべきことだ。
 しかし、アンプの音が、いやアンプに限らずスピーカーやその他のオーディオ機器一切の音が、蒸留水をめざすことは、わたくしは正しくないと思う。むろん色がついていてはいけない。混ぜものがあっても、ゴミが入っていても論外だ。けれど、蒸留水は少しもうまくない。本当にうまい、最高にうまい水は、たとえば谷間から湧き出たばかりの、おそろしく透明で、不純物が少なくて、純水に近い水であるけれど、そこに、水の味を微妙に引き立てるミネラル類が、ごく微量混じっているからこそ、谷あいの湧き水が最高にうまい。わたくしは、水の純度を上げるのはここまでが限度だ、と思う。蒸留水にしてはいけない。また、アンプの音が、理想の上では別として現実に蒸留水に、つまり少しの不純物もない水のように、なるわけがない。要は不純物をどこまで少なくできるかの闘いなのだが、しかし、谷間の湧き水のたとえのように、うまさを感じさせる最少限必要なミネラルを、そしてその成分と混合の割合を、微妙にコントロールしえたときに、アンプの音が魅力と説得力をもちうる。そういうアンプが欲しいと思う。そして水の味にも、その水の湧く場所の違いによって豊かさが、艶が、甘味が、えもいわれない微妙さで味わい分けられると同じように、アンプの音の差にもそれが永久に聴き分けられるはずだ。アンプがどんなに進歩しても、そういう差がなくならないはずだ。そこにこそ、音楽を、アンプやスピーカーを通じて聴くことの微妙な楽しみがある。
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私はC29もML6、どちらもミネラルウォーターだと思う。
ただ《その水の湧く場所の違い》があり、そのことによる含有されるミネラル類の量、割合に違いがある。
ML6は軟水のミネラルウォーターで、C29はML6よりは硬水という、そんな違いだと感じている。

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