4350の組合せ(その5)
ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’80」での、
井上先生の4350Aの組合せは、
マークレビンソンのML6のキャラクターとのミスマッチングかもしれないということで、
マッキントッシュのC29に変更されている。
記事では、ここで井上先生にML6に対する感想をきかせてください、とある。
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井上 ご承知のように、マークレビンソンにはLNP2Lというコントロールアンプがあります。ML6よりひとつ前の製品、ということになりますが、このLNP2Lはかなり明快な音で、輪郭をくっきりと出すアンプです。ただ音の作り方からいうと、やや古典的な感じがある。表情の豊かさとなめらかさ、それから音場感的な広がりという聴き方をしたときには、いまとなるとちょっと古典的かなという音になっているんですね。
それに対してML6は、音の粒立ちもさらにこまかくなったし、帯域も広く感じるようになったし、いかにも現代的な音になっています。極端にいえば、アナログ録音に対するデジタル録音、といった感じがあるのです。
しかし、JBL♯4350Aと組み合わせてみると、ややものたりなさがあります。音としてはたいへんきれいなんだけど、もうひとつ力感が不足なのですね。これだけの大型スピーカーを使うことの、大きな理由のひとつは、通常の音量でも力強く、リアリティのある音で聴きたい、ということでしょう。たんにきれいな音というだけでは、万全ではないと思うんですよ。それはむしろ、かつての古い聴き方で要求されたことです。つまり、レコードによごれた、きたない音が入っていても、それをいわば濾過してきれいに鳴らす、そういう要素がかつては重要視させていたのです。
しかし、現代はそうではない。レコード側もずいぶん進歩して、録音もきわめてよくなってきていますから、最近では、再生音楽のなかのリアリティの追求ということが、大きくクローズアップされていると思います。そういう要素を追求する聴き手が、しだいに増加してきているわけです。
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この井上先生の発言を、
ステレオサウンド 52号の特集の巻頭、瀬川先生の「最新セパレートアンプの魅力をたずねて」、
この中に登場してくるML6についての文章と対比させて読んでいくと、ひじょうに興味深い。