ブラインドフォールドテスト(ステレオサウンド 50号より)
創刊50号記念の特集として、
ステレオサウンド 50号の巻頭には、
井上卓也、岡俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹、山中敬三の五氏による座談会が載っている。
ステレオサウンドでは10号ではじめてブラインドフォールドテストを行っている。
試聴室の三面の壁にブックシェルフ型スピーカーを50機種積み上げて、
スピーカーの前にはカーテン、さらにカーテンが透けてスピーカーが見えないように、
部屋は真っ暗にしてテスターのところだけに照明が当るようにしている。
しかもスピーカー配置は毎日変えられている。
このブラインドフォールドテストを、なぜステレオサウンドは行ったのか、
その理由について瀬川先生が語られている。
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瀬川 この第10号で、ブラインド・テストを行なったというのは、ぼくは原田編集長の叛骨精神のあらわれだと思っています。これはいまだからいってもいいと思うんだけど、「ステレオサウンド」が、さっき山中さんがいわれたように、国内製品と海外製品を同じ土俵で評価したことが、結果的にいうと、当時のオーディオ界全体の風潮から見ると、「ステレオサウンド」がやっていることが海外製品偏重に見えてしまったんですね。それが一つ。
それからもう一つは、これもさっき話にでたように、製品の評価にフィーリングというか感性の面を大切にしたために、逆になにか先入観をもってテストにのぞんでいる雑誌だという、一般的な評価がたってしまったわけです。
この二つのことに反発して、それならブラインド・テストをしてみよう、ということになったのでしょう。そして、その結果、いちおうの成果を収めたんですね。そこで「ステレオサウンド」は引きつづいて、第12号でカートリッジのブラインド・テストを行なうわけですが、以後はきっぱりとやめてしまったわけです。
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瀬川先生が二つ目の理由として挙げられていることは、当時の雑誌の評価の仕方が関係している。
このことについても、ステレオサウンド 50号から瀬川先生の発言を引用しておこう。
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瀬川 つまり、それ以前のレコード雑誌あるいは技術系の雑誌があつかったオーディオ欄での、そういった形の製品の取り上げ方というのは、主に技術畑のひとが聴いて、耳を測定器のようにはたらかせて、歪みがどうであるとか、低音・高音のバランスがどうであるとか、そういうことだけをチェックしていたのです。「ステレオサウンド」のテストリポートで、はじめて音楽がどう聴こえるかという問題が、そこに入りこんできたわけであり、同時に、製品がもつフィーリングまでも含めて評価するようになったんですね。
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これはステレオサウンド 3号のアンプの総テストのことが話題になったときの発言である。
3号は1967年に出ている。