使いこなしのこと(続・録音の現場でも)
録音の現場での、ある話を、その現場にいた人から聞いている。
クラシックの録音現場に、ある人が見学に来た。
取材でもあったようだ。
この人は、スタジオにはいってくるなり、
「このマイクロフォンのセッティングは間違っている」と言ったそうだ。
独り言で、誰にも聞こえないようにではなく、
かなりの大きな声だったらしい。
見学に来た人は、録音のプロフェッショナルではないらしい。
ただ録音のことはよく勉強している人らしい。
それにしても、である。
音も聴かずに、ただマイクロフォンのセッティングを見ただけで、
間違っていると断言したのは、
彼が理想のマイクロフォン・セッティングと考えているやり方と違っていたからでしかない。
さまざまなレコードを聴き、最良の録音と思えるレコードについて調べていく。
どういう器材を使い、どういうマイクロフォン・セッティングだったのか。
そこにある法則が見出せたとする。
特にマイクロフォン・セッティングが同じであれば、
そのマイクロフォン・セッティングが彼にとっての理想のやり方となるのは、
理解できないわけではない。
それでも音も聴かずに、ただ見ただけで、
自分が理想と考えているマイクロフォン・セッティングが違うだけで間違っている、と断言できるのは、
しかも録音の現場において、その録音を行っている人に対して聞こえるようにいってしまうのは、
呆れるを通り越して、ある意味、すごいとしかいいようがない。
彼は同じマイクロフォン・セッティングをすれば同じ音で録れると思っているのだろうか。
彼はヤーコプ・シュテンプフリの言葉をどう受けとめるのだろうか。