サイズ考(その17)
クレルの独自のパーツ配置は、その後、他社のアンプと同じように凝集されていく。
パーツ同士が近接すれば、互いに干渉する度合いが強まる。
離せば、干渉は減っていくが、配線がのび、信号経路が長くなる。
一概にどちらが正しいとは言えない。
それでも初期のクレルのアンプで聴けた音の質感は、
あのコンストラクションと無縁ではないと、いまでも思っている。
クレルのKSA100やKMA200のコンストラクションで特徴的だったことをひとつ書くと、
ヒートシンクとファンの位置関係がある。
ファンを使っているアンプでは、ヒートシンクが横方向に置かれていることが多いが、
クレルでは縦方向であり、ファンの位置も、こういう場合、ヒートシンクの上に取りつけられる。
クレルはというと、シャーシ底板とヒートシンクの間に、
ファンがゴムプッシュを介して取りつけられている。めったにない取付け方法だ。
パワーアンプのパーツの中では、電源トランスに次ぐ重量物がヒートシンクであり、
通常なら、シャーシにしっかりと固定するものを、
あえてファン上に置き、左右に力を加えると、多少ふらつくようにしている。
おそらく、この点は、常識にとらわれることなく、耳で判断しての結果であろう。