オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その10・もうすこし余談)
フィデリティ・リサーチのトーンアームFR64Sは、型番末尾のSが示すようにステンレスが使われている。
SのつかないFR64はアルミ製である。
瀬川先生はFR64SよりもFR64のほうを高く評価されていた。
ステレオサウンド 43号のベストバイの中で、
《ステンレス製の64Sは、私の試聴したものは多少カン高い傾向の音だった。その後改良されて音のニュアンスが変っているという話を聞いたが、現時点では64の方を推す次第。》
と書かれている。
PD121AとFR64Sの組合せを見ていて感じていたのは、このことでもあった。
音は聴いていないのでなんともいえないのだが、
PD121のアルミの質感とFR64Sのステンレスの質感とがうまく合っていない印象を感じていた。
ささいなことといえばささいなことである。
モノクロの写真で見ていたときには感じにくかったことを、
実物を前にすると、はっきりと感じとれる。
ラックスはPD121、PD131の前にP22というアナログプレーヤーを、1966年に出している。
ベルトドライヴ方式のこのプレーヤーには、グレース製のトーンアームが付属していた。
PD121にはトーンアームが付属してこない。
原稿製品のPD171には、PD171ALとPD171Aとがあり、ALモデルはトーンアームなしだ。
PD171にはトーンアームなしのモデルはなかった。
PD121とPD171の大きな違いは、ここに関係しいてる点にもある。
PD121を使ったことのある人ならば、
トーンアームベースがバヨネット方式になっていることを知っている。
カメラのレンズ交換のそれと同じで、簡単にトーンアームベースを取り替えられるようになっている。
トーンアームを開発する、もしくは専門メーカーに依託することで、
PD121のプレーヤーシステムとしての完成度は高くなったであろうが、
それをあえてせずにアームレス仕様として送り出したのは、
このバヨネット方式のトーンアームベースにこだわってのことではないのか。
そういうこだわりが、PD171には感じられない。
REPLY))
「カメラのレンズ交換のそれと同じで、簡単にトーンアームベースを取り替えられるようになっている。」
PD121/131のアーム&アームベースは、カメラとレンズの関係とは全く違う。実際に使えばわかるけれど、SLRカメラでニッコールやロッコールをショット毎に取り替えて、というような気楽に交換するものではない。
あれは、アームレスプレイヤーを作る際に、ユーザーがアームを選択出来るようにするための手段に過ぎない。「切り替えて」「交換して」使うものではないんです。そんなことは、不可能。