Date: 4月 21st, 2015
Cate: 正しいもの
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「正しい音とはなにか?」(その15)

(その14)で引用した五味先生の文章には、「あらためてこのことに私は気づいた。」とある。
何をあらためて気づかれたのか。
     *
 そもそも女房がおれば外に女を囲う必要はない、そういう不経済は性に合わぬと申せるご仁なら知らず、女房の有無にかかわりなく美女を見初めれば食指の動くのが男心である。十ヘルツから三万ヘルツまでゆがみなく鳴るカートリッジが発売されたと聞けば、少々、無理をしてでも、やっぱり一度は使ってみたい。オーディオの専門書でみると、ピアノのもっとも高い音で四千ヘルツ、これに倍音が伴うが、それでも一万五千ヘルツぐらいまでだろう。楽器でもっとも高音を出すのはピッコロやヴァイオリンではなく、じつはこのピアノなので、ピッコロやオーボエ、ヴァイオリンの場合はただ倍音が二万四千ヘルツくらいまでのびる。
 一番高い鍵を敲かねばならぬピアノ曲が果たして幾つあるだろう。そこばかり敲いている曲でも一万五千ヘルツのレンジがあれば鑑賞するには十分なわけで、かつ、人間の耳というのがせいぜい一万四、五千ヘルツ程度の音しか聴きとれないとなれば、三万ヘルツまでフラットに鳴る部分品がどうして必要か——と、したり顔に反駁した男がいたが、なにごとも理論的に割切れると思い込む一人である。
 世の中には男と女しかいない、その男と女が寝室でやることはしょせんきまっているのだから、汝は相手が女でさえあれば誰でもよいのか? そう私は言ってやった。女も畢竟楽器の一つという譬え通り、扱い方によってさまざまなネ色を出す。その微妙なネ色の違いを引き出したくてつぎつぎと別な女性を男は求める。同じことだ。たしかに四千ヘルツのピアノの音がAのカートリッジとBのとでは違うのだから、どうしようもない。
     *
実は、ここのところは引用するつもりは最初はなかった。
けれど(その14)を書いていて気づいたことがあった。

世の中には男と女しかいない、その男と女が寝室でやることはしょせんきまっている、とある。
寝室は、いわば密室である。
リスニングルームも、また密室であることが多い。

リビングルームで家族とともに音楽を聴くのが楽しみという人もいるけれど、
私にとってのリスニングルームとは、そういう意味での「密室」である。

この密室であることが、
オーディオを介して音楽を聴くという行為は密室での行為であるがゆえに、問題となってくるからだ。

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