老いとオーディオ(その9)
「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲について黒田先生が書かれた文章、
どこかに書かれたものなのか(たぶんマガジンハウスの雑誌のどれかだった気もする)、
それすらはっきりと憶えていないので、はっきりとしたことではないのはことわっておく。
黒田先生は「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲を、
女性の性的快感の高まりを引き合いに出されて書かれていた。
私は同じことを、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第一楽章のカデンツァでそう感じたことがあった。
東芝EMIからジョコンダ・デ・ヴィートのLPボックスが出た時だった。
彼女の弾くカデンツァを聴いていて、そう感じた。
そのことを黒田先生の「トリスタンとイゾルデ」についての文章を読んだ時に思い出した。
たしかカルロス・クライバーの「トリスタンとイゾルデ」について書かれたものだったはずだ。
音楽にはそういう面がある。
こんなことを書けば、クラシック音楽の、一部の聴き手からは、
神聖なる音楽に対して、なんてことを感じているんだ、思っているんだ、とお叱りをうけるだろうが、
そう感じたのは事実であり、隠すようなことではない。
だからというわけではないが、
五味先生の「勃然と、立ってきた」のもわかるような気がする。