Date: 4月 16th, 2015
Cate: 対称性
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対称性(その1)

CDが登場したころだったはずだ、
あるメーカーのエンジニアの方からきいたことを思い出す。

デジタル録音再生システムにおいて、
ふたつのアナログフィルターは同一でなければならない、ということだった。

A/D変換の前段にはアナログフィルターがある、
D/A変換の後段にもアナログフィルターがある。
このふたつのアナログフィルターは、本来同一であるのが原則だということだった。

CD登場前に、数社からPCMプロセッサーが登場した。
ビデオデッキに接続して使うモノで、
このプロセッサーにはA/D、D/A、ふたつの変換器を搭載していた。
おそらくこのPCMプロセッサーにおいては、ふたつのアナログフィルターは同一だったのかもしれない。

けれどCDプレーヤーにはD/A変換回路はあっても、A/D変換回路はない。
CDというメディアのA/D変換は録音の現場にある機器に搭載されている。

こうなってしまうとふたつのアナログフィルターは、別のモノとなってしまう。
そういう状況からCD再生(デジタル再生)は、一般家庭で始まった。

ふたつのアナログフィルターが同一であれば、
そこには対称性が保たれていたはずである。
けれどCDの再生には、その対称性は崩れている。

オーディオの原点であるアクースティック蓄音器のことをおもう。
これほど音の入口と音の出口の対称性が存在していたシステムは、
電気が加わっていくことで崩れていってしまう。

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