程々の音(その25)
タンノイ・コーネッタは、どんな音を響かせていたのか。
五味先生が「ピアニスト」の中で書かれている。
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待て待てと、IIILZのエンクロージュアで念のため『パルジファル』を聴き直してみた。前奏曲が鳴り出した途端、恍惚とも称すべき精神状態に私はいたことを告白する。何といういい音であろうか。これこそウィーン・フィルの演奏が、しかも静謐感をともなった。何という音場の拡がり……念のために、第三幕後半、聖杯守護の騎士と衛士と少年たちが神を賛美する感謝の合唱を聴くにいたって、このエンクロージュアを褒めた自分が正しかったのを切実に知った。これがクラシック音楽の聴き方である。
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こういうのを読むと、ますますコーネッタが欲しくなる。
これまでに何度もコーネッタでいいではないか、
これ以上何を求めるのか。
コーネッタよりも上の世界があるのはわかっているし知っている。
ふところが許す限り、どこまでも上の世界を追い求めたくなるのはマニアの心根からくるものであろうが、
そうでない心根からくるものがコーネッタを欲しがっている。
タンノイの同軸型ユニット、それも25cm口径。
大きくも小さくもないサイズのユニットは、時として中途半端に見えてしまうけれど、
家庭用のスピーカーのサイズとしてはちょうどいいような気もしてくる。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のタンノイ号で、
瀬川先生がタンノイのリビングストンにインタヴューされている。
リビングストンが、ガイ・R・ファウンテン氏のことを語っている。
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彼は家ではほんとうに音楽を愛した人で、クラシック、ライトミュージック、ライトオペラが好きだったようです。ロックにはあまり興味がなかったように思います。システムユニットとしてはイートンが二つ、ニッコーのレシーバー、それにティアックのカセットです。
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誰もが(瀬川先生も含めて)、ファウンテン氏はオートグラフを使われていたと思っていたはず。
私もそう思っていた。けれど違っていた。
イートンだった、25cm口径の同軸型ユニットをおさめたブックシェルフだったのだ。