オプティマムレンジ考(その8)
オーディオは、ほんのささいなことによっても音は変ってしまう。
こんなことで変ってほしくない、という気持ももちながら聴いても、
どこかを変えれば、音はわずかであったり、ときにはかなりの変化量であったりするけれど、
必ず音は変化する。
何をやっても音の変らない装置を開発できれば、
これは皮肉ではなく、素晴らしいことだと思う。
(ただし、ひどい音ではなくて、いい音の装置という前提はつくけれど)
なぜ、こんなにも音は変化するのか。
無数に、その理由はあるはずだろうが、ひとつはっきりと大きい理由としてあげられるのは、
オーディオの帯域幅が広いから、だと考えている。
人間の可聴帯域といわれている20Hzから20kHzまでは、10オクターヴである。
この10オクターヴにわたる帯域幅こそが、オーディオの難しさの根本的な原因のような気がする。
いま話題になることが多いハイレゾリューション(ハイレゾとは書きたくない)。
高域は20kHzよりも上まで延びるようになった。
40kHz以上でも、プログラムソースに信号として記録できるようになっている。
もっともっとも高域の限界は延びていく。
低域はハイレゾリューション以前から、かなり低いところまで記録できている。
アナログディスクでは8Hzまでカッティングが可能だし、
CDでは理論的には0Hzまで可能である。
低域は仮に10Hzだとすると、高域が20kHzまでであれば、11オクターヴに拡大する。
高域が40kHzまでになれば12オクターヴになる。80kHzで13オクターヴ。
帯域幅は広くなっていく。
帯域幅が広くなっていくことは技術の進歩ではある。
けれど、そこに懸念はないと言い切れるだろうか。