オーディオ「原器」考(その4)
オーディオ機器の中で、まだ30年ちょっという歴史しかもたないCDプレーヤーは、
簡単に原器といえる候補を挙げられそうに思える。
私が最初に聴いたCDプレーヤーは、マランツのCD63だった。
試作品のCD63だったこともあり、後に市販されたCD63とは比較にならない音の良さを持っていた。
以前書いているように、
ステレオサウンドにそのころリファレンスプレーヤーとしてあったパイオニアのExclusive P3との比較で、
小沢征爾指揮の「ツァラトゥストラ」を聴いた。
Exclusive P3からみればちっぽけな筐体のCDプレーヤーが、抜群の安定感をもって、
冒頭の、あの有名なフレーズを試聴室に響き渡らせた。
すべての点でCDが優れていたわけではなかったけれど、
すごい可能性をもったメディアが登場したことを、試聴室にいたすべての者に強く印象づけた。
CDのオリジネーターでもあるフィリップスによるCD63だから、これがCDプレーヤーの原器といってもいい──、
そう思いつつも、フィリップスのLHH2000の初期モデルの音こそが原器と呼べるかもしれない、と思ってしまう。
CDのオリジネーターはフィリップスだけではない。ソニーもである。
だからソニーのCDP101も原器といえるのか。
トレイ式のCDプレーヤーとしては原器といえる。
だが肝心の音に関しては、次のモデルのCDP701ESのほうが印象に残っている。
ここで少し考えを変えてみたい。
実は別のテーマで書こうと考えていたことに、
LNP2と同時代のコントロールアンプ、4343と同時代のスピーカーシステム、というのがある。
この「○○と同時代の……」における○○も、原器のようなモノなのかもしれない、と思えてきたのだ。