広告の変遷(ARの広告)
1970年ごろのアコースティックリサーチ(AR)の広告には、演奏家が登場している。
マイルス・デイヴィス、ジュディ・コリンズ、それにヘルベルト・フォン・カラヤンが、
ARのスピーカーシステムを自宅で使っている、と広告にはある。
この手の広告のやり方は昔からあり、ほかの会社もやっている。
同時期、アルテックの輸入元であったエレクトリは、渡辺貞夫の自宅の写真を掲載、
そこにはアルテックのMalagaが置かれていた。
以前は、この手の広告は、あくまでも広告だから、という感じでしかみてなかった。
真剣に受けとめることはしていなかった。
けれど、カラヤンにしてもマイルスにしても、ジュディ・コリンズ、渡辺貞夫にしても、
すでに著名な演奏家である。
つまりARが、彼らの知名度を広告として利用しているわけで、
そこにはなんからの謝礼が生じているのであろうが、
それでもマイルスにしてもカラヤンにしても、
ARのスピーカーシステムに良さを見出していたからこそ、ではないのか。
そう思いはじめると、
一度はカラヤンのこのころのアナログディスクは、ARのスピーカーシステムで聴いてみたい、
そう思うようになってきた。
カラヤンが、このころどういうシステムを使っていたのかはわからない。
ARの、シンプルなフロントパネルのプリメインアンプとアナログプレーヤーだった可能性もある。
トーンアームはSMEの3009で、カートリッジはシュアーだったのだろうか。
少なくともカラヤンはARのスピーカーで、発売されている自分のレコードを聴いていた、と考えられる。
そして、どれだけ満足していたのかはわからないものの、
決して大きな不満はなかったからこそ、ARの広告に登場したのだろう。
ARのシステムで聴くカラヤンが最上のカラヤンの再生ではないけれども、
少なくとも標準となるカラヤンの再生といえるのかもしれない。