世代とオーディオ(その9)
ステレオサウンド 49号の巻末のUsed Component Market(売買欄)に、
アンペックスのAG440B-2が出ていた。
実働250時間、完全オーバーホール、オプションの4トラック再生用ヘッドなどがついている。
希望価格は125万円で、連絡先はステレオサウンド編集部気付になっていた。
このアンペックスは、まちがいなく瀬川先生のアンペックスだと直感した。
欲しい、と思ったけれど、私はまだ16歳。
とうてい無理な金額である。
このころは瀬川先生がアンペックスを購入されたのがいつなのかわからなかった。
けれどその後、古いオーディオ雑誌で瀬川先生のリスニングルームが紹介されているのをみると、
かなり以前から所有されていたことがわかる。
けれど実働250時間ということは、瀬川先生はあまり使われていなかったことになる。
1970年代後半のステレオサウンドには、オープンリールのミュージックテープの広告が載っていた。
2トラック38cmのミュージックテープは一万円をこえていた。
LPはプレスで大量生産が可能だが、ミュージックテープはLPのように簡単に大量生産できるものではない。
基本的にはコピーなのだから。
高価になるのはわかっていた。
それでも魅力的なモノであれば欲しい、と思ったはずなのだが、
食指が動くモノはほとんどなかった。
それでもオープンリールデッキには、オーディオ機器としての魅力があったから、
欲しいと思っていたわけだが、これで録音するものはいったいなにになるのか、とも考えていた。
私は「五味オーディオ教室」でオーディオにどっぷりつかってしまった人間だから、
五味先生と同じように毎年バイロイト音楽祭を録音するようになるのだろうか、
あとはNHK-FMによるライヴ中継なのか。
どちらにしてもFM放送ということになる。