シンプルであるために(ミニマルなシステム・その11)
(その9)で、Wadia 5とWadia 390 + Wadia 790のトランスの数を書いている。
気づかれている方もおいでであろうが、Wadia 5の二基、Wadia 790の五基は片チャンネルの数でしかない。
両チャンネルとなるとWadia 5は四基、Wadia 390 + Wadia 790は十一基となる。
単体のD/Aコンバーターとパワーアンプ、あいだにフェーダーをいれて使うとしよう。
このときのトランスの数はいくつになるか。
パワーアンプがモノーラルであれば、最低で三基である。
D/Aコンバーターが、デジタル部とアナログ部の電源回路を電源トランスからわけたとして、計四基。
Wadia 390 + Wadia 790の十一基という数は、
オーディオマニアとしては、そこまで徹底して分離してくれた、と嬉しくもなるが、一方で疑問も生じてくる。
そこまで電源トランスをわけるくらいなら、筐体を分けた方がずっとスマートに思える。
ワディアのPower DACはD/Aコンバーター内蔵のパワーアンプなのか。
ワディアはD/Aコンバーターをつくりたかったのか。
Power DACというコンセプトはWadia 5もWadia 390 + Wadia 790も同じである。
けれど何かが決定的に違っているようにも感じる。
そのことが、Wadia 5にミニマルな印象を受け、
Wadia 390 + Wadia 790にはミニマルという印象はほとんど受けないことにつながっているのではないか。
ステレオサウンド 133号の三浦孝仁氏の記事を読むと、
ワディアの創設者であるドン・ワディア・モーゼスが数年前に健康上の理由からワディアデジタルを去った、とある。
古参のエンジニアもほとんどいない、ともある。
この数年前がいつなのかは書いてない。
なのでてっきりWadia 5の開発は創設者が関わっていて、
Wadia 390 + Wadia 790には関わっていないのではないか、とさえ思った。
けれど三浦孝仁氏によるステレオサウンド 99号のワディア訪問記を読むと、すでに引退したとある。
そうなると開発者が入れ替わったから、Wadia 5からWadia 390 + Wadia 790への変化があった、といえない。