シンプルであるために(ミニマルなシステム・その9)
アルパイン・ラックスマンのD/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプLV109が登場した時、
D/Aコンバーターを内装することのメリットよりもデメリットを問題にする人が多かったように憶えている。
CDプレーヤーが世に現れて、わりとすぐにCDプレーヤーが発生源であるノイズが問題になってきた。
すこしでもその影響を取り除くために、CDプレーヤーの電源は、
アンプとは違うコンセントから取ることがオーディオ雑誌にも載るようになっていった。
アンプにD/Aコンバーターが内蔵されることは、ノイズ発生源をアンプの中につくることでもある。
当然、その影響は別筐体のCDプレーヤーよりも大きくなる、ともいえる。
メーカーもデメリットはわかっているから、
ノイズ対策を施していることをカタログに謳う。
それでも完璧なノイズ対策は不可能である。
結局はメリットとデメリットを測りにかけて……、ということになり、
その判断はメーカーによって違ってもくる。
ステレオサウンド 100号で紹介されたWadia 5の電源トランスは、
円筒型の筐体の底に大型のトロイダルトランスが一基、その上に平滑コンデンサー、
この上部にも小型のトロイダルトランスがある。
ステレオサウンド 133号紹介のWasia 390 + Wadia 790では、
コントローラー部のWadia 390に一基、本体のWadia 790に五基と驚くほど増えている。
すべてトロイダル型である。
おそらくWadia 5でも巻線はデジタル/アナログで独立していたと思われる。
それでもノイズ対策の徹底化を図るには電源トランスから分離した方がより確実で効果的である。
Wadia 5の開発で、ノイズの問題をどう処理するのか。
その答がWasia 390 + Wadia 790の六基の電源トランスといえる。
徹底するにはここまでやるしかないわけだが、
同時にPower DACという形態をとる必要性の希薄化を生じさせているのではないか。