江川三郎氏のこと(その3)
なぜ私だけでなく、けっこう数の人が逆オルソンを試したのだろうか。
そして試した人がみな逆オルソンは採用していないのは、なぜか。
江川三郎氏による逆オルソンの記事には、ある図があった。
マイクロフォンとスピーカーの位置関係(相関関係)を示した図だった。
録音のときにマイクロフォンは、こう設置する、とあった。
再生ではマイクロフォンの位置と向きと同じになるようにスピーカーを設置するのが逆オルソンであり、
図はそのことを解説していた。
これにはうまくだまされた。
あえてだまされた、と書く。
完全に間違っているわけではないからだ。
確かに録音時のマイクロフォンは、その図にあるようにセッティングされることはある。
だがそれは純粋なワンポイント録音の時だけである。
それ以外の録音ではマイクロフォンの数はもっと多く、
その位置、向きもまた違っている。
ほとんどの録音はワンポイント録音ではない。
複数のマイクロフォンが使われる。
つまり逆オルソンの説明図にあったようなマイクロフォンとスピーカーの関係が実現できるのは、
ワンポイントマイクロフォンによる録音のみである。
高校生の時、そのことに気づかなかった。
気づいたとしてもワンポイント録音のレコードは、まだ持っていなかった。
これから先、逆オルソンをもう一度試すかどうかはなんともいえない。
もし試すことがあるとしたら、ワンポイント録音を用意して、である。