Date: 12月 21st, 2014
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リファレンス考(その5)

ステレオサウンドの試聴室に持ち込まれるスピーカーシステムのタイプは実に様々である。
大きさも小型のモノからフロアー型の、それもかなり大型のモノもある。
パワーアンプの出力と関係してくる出力音圧レベルもかなり低いものから100dBをこえるものもある。

その差は20dBほどである。
20dBの違いは、出力に換算すると100倍の違いになる。

つまりリファレンスのパワーアンプとして、出力は極端に高くなくてもいいけれど、
ある程度の出力でなければならない。
それに高能率のスピーカーシステムを鳴らす時には出力はさほど必要としないけれど、
かわりに残留ノイズの低さが求められる。

しかも1980年代にはいり、スピーカーシステムのインピーダンスは低くなる傾向があった。
標準としての8Ωがあり、やや低い6Ωというのも登場してきた。4Ωも増えてきた。
そしてアポジーのリボン型スピーカーシステムのように、さらに低いインピーダンスも出てきた状況では、
低い負荷インピーダンスであっても、ある程度は駆動できることも条件となってくる。

これらの条件を満たして、魅力的な音を出すアンプであっても、
その魅力的な音が個性として強すぎる傾向のアンプは、リファレンスとしては適さない。

これまであげた条件を満たした優れたパワーアンプがあったとして、
その価格が一千万円近い、もしくはこえるようなアンプであれば、リファレンスとして適さない、ということになる。

私がいたころは持ち込まれるスピーカーシステムの価格は、低価格のモノもけっこうあった。
59800円のスピーカーシステムが隆盛だったころでもある。
こういう価格帯のスピーカーシステムを、いくらいい音がするからといって、
途方もない価格のパワーアンプで鳴らすことに、どういう意味があるだろうか。

実験という試聴であれば、そういう価格的なアンバランスも試してみるのもおもしろいが、
新製品紹介記事で、そんなアンプで鳴らして音が素晴らしかった、
と書いてあっても、読み手の参考になるだろうか。

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