真空管アンプの存在(その75)
結論を書こう。
ただ、この結論は私が実際に耳にした範囲においての、私にとっての結論であり、
私と違う考え、私と違う音の聴き方・捉え方をする人にとってはまったくあてにならないことにもなろう。
ずっと以前に真空管の単段の無帰還のラインアンプ(つまり反転アンプ)、
それもシャーシにおさめることなくバラックの状態という、完全な実験用のアンプで、
三端子レギュレーターによる定電圧回路、TL431を使った定電流回路、交流点火、
非安定化の直流点火の4つの方式を聴いたことがある。
私にとって、最も音が冴えなかったのは三端子レギュレーターによる定電圧点火だった。
頭でわかっていても、実際にその音を聴くと、
ヒーターの点火方法でこんなにも音が変化するものか、と驚いてしまう。
驚くほど大きな差が、三端子レギュレーターの定電圧点火とTL431による定電流点火のあいだにはあった。
このふたつのあいだに、交流点火と非安定化の直流点火が、
中間よりもやや定電流寄りにあると感じた(もう20年ほど昔の記憶なのでこのへんはすこし曖昧なところも……)。
パワーアンプの出力管も定電流点火にしてみたら……、と思わず夢想してしまうほど、定電流点火の音は良かった。
定電流点火といっても、私は新氏が発表された三端子レギュレーターによる回路の音は聴いたことがない。
というよりも、定電流点火に関心をもち、試してみようと思われる方は、安易に三端子レギュレーターにたよらずに、
TL431を使った回路で実験してみてほしい。