リファレンス考(その4)
ステレオサウンドは季刊誌だから三ヵ月に一冊出る。
この三ヵ月間、試聴室をずっと使っているわけではない。
試聴室をまったく使わない期間があることになる。
試聴室のリファレンス機器に求められる要素のひとつは、このことと関係してくる。
使う時は集中して使う。使わなくなる時も続く。
毎日コンスタントに使うという使い方とはかなり違う使い方をしていることになる。
SUMOのThe Goldをを使っていたころ、
正月に帰省して戻ってきた時、このアンプの電源スイッチをいれるのはどきどきしていた。
毎日鳴らしている分にはきわめて安定していたけれど、
一週間ほど使わなくなると、その後の電源投入時には、ボスッというショックノイズが発生する。
The Goldには保護回路はない。
一般的なアンプでも保護回路がなければ、このノイズはスピーカーから出る。
The Goldにはないから、このノイズを聴くことになる。
意外に思われるかもしれないが、毎日使っていると、このボスッというノイズは出ない。
少なくとも私が使っていたThe Goldは出なかった。
このノイズは、いわばアナログディスクにカートリッジを降ろした時のノイズのようなものである。
ボリュウムを絞って降ろせば、スピーカーからボソッという音は出ない。
ボリュウムをあげていれば、針先が溝に着地した際の音が、ボソッとスピーカーから聴こえてくる。
このノイズは、そこから始まる音楽鑑賞の気分を阻害するものではあるけれど、
このときの音がどんな感じで出てくるかで、システムの音、調子がある程度は把握できる。
その意味で、The Goldのボスッという、電源投入時のノイズの発生は、
The Goldの状態を知るバロメーターともいえた。
とはいえ、試聴室のリファレンスアンプとして、こういうアンプは条件にあわない。