名器、その解釈(Technics SP10の場合・その11)
私が自分のモノとしたテクニクスのオーディオ機器はふたつある。
ひとつはSB-F01。
アルミダイキャストのエンクロージュア(といっても手のひらにのるサイズ)に、
ヘッドフォンのユニットを搭載したような小型スピーカーだ。
アンプのスピーカー端子でも鳴るし、ヘッドフォン端子に接いでも鳴る。
ペアで15000円だった。
サブスピーカーとして高校生の時に購入した。
ロジャースのLS3/5Aは高くて買えなかったから、というのもSB-F01を購入した理由のひとつである。
いまも実家にあるはずだし、手元にも1ペアある。
瀬川先生が所有されていたSB-F01である。
このSB-F01で、中目黒のマンションで深夜ひっそりとした音量で聴かれていたのだろうか。
はっきりとしたことはわからないが、瀬川先生がSB-F01をお持ちだったことが意外だったし、嬉しくもあった。
もうひとつのテクニクス製品はSL10である。
LPジャケットサイズのアナログプレーヤーである。
ダイレクトドライヴ開発10周年を記念して開発された製品だから、型番に10がついている。
このふたつのテクニクス製品に共通していえることは、小型ということ。
もともとテクニクスというブランドは、Technics1という小型スピーカーからスタートしている。
だからというわけでもないが、他のメーカーよりも小型の機器をうまくつくるところがある。
SL10がまさにそうだし、コンサイスコンポもそうだった。
それにSB7000の小型版、SB007もある。
その一方で非常に大型のアンプ、スピーカーシステムも手がけている。
小型のモノと大型のモノ。
テクニクスの製品に限っていえば、小型のモノには遊び心があるように感じている。
その遊び心に気づいたから、SB-F01とSL10を買ったのかもしれない。
遊び心。
辞書にこうある。
①遊びたがる気持ち
②まじめ一方でなく、ゆとりやしゃれ気のある気持ち
③音楽をたしなむ心
③の意味があるのは、意外だった。
遊び心という、自分自身が愉しむという気持、
これが使い手(買い手)に伝わる。