TDK MA-Rというデザイン(その7)
TDKのMA-Rのデザインには、二度驚いている。
一度目は登場した時であり、二度目はCDが登場してしばらくしてからだった。
MA-R以前のカセットテープの色は、黒っぽいものばかりだった。
明るい色のカセットテープはなかった、と記憶している。
MA-R以前は、カセットテープの色について考えることはなかった。
MA-Rが登場し、CDが登場してから、やっと考えるようになった。
MA-Rの透明のケースと、一見するとアルミと思える亜鉛ダイキャストの採用は、
CDを象徴しているともいえる組合せである。
CDのピット面はレザー光を反射するためにアルミが使われている。
その上にポリカーボネイトの保護層がある。
ここは当然ながら、透明である。
そこに気づけば、MA-R以前のカセットテープの色は、LPの色を元にしているのだろう、と思えてくる。
CDが成功したのは、LPとまったく違う見た目だったこともあるはずだ。
誰が見ても、LPとCDははっきりと違うことがわかる。
ところがSACDにしてもDVD Audioにしても、ディスクの見た目はCDとどれだけ違うだろうか。
SACDにはSACDのマークが、DVD AudioにはDVD Audioのマークが入っている。
それで見分けはつく、というのだろうが、
そんなところまで見ている人は、オーディオに関心のある人たちであり、
CDのようにオーディオに関心のない人でもひと目でわかるものではなかった。
マークに頼らなくとも、誰が見てもCDとは違う新しいメディアということを示すことができていたら、
SACDの存在は、ずいぶん違っていたはずだ。
SACDにはデザイナーは関与していなかったのだろう。